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vol.144 『新商品を「数値」で捉える』

さて皆さん、RDSの今売れランキングをご存じでしょうか。
RDSでは、全国の1,250店舗の食品スーパーサンプル店舗から日々POSデータを収集しています。そのPOSデータの中から、新商品だけを抜き出して毎日ランキング結果をレポート、これを「今、売れている話題の新商品ランキング」、略して「今売れランキング」として、当社HPとTwitterに毎日公開しています。

 日々新商品ランキングと向き合っていますと、圧倒的な品数と、次々と入れ替わる商品にばかり目を奪われて、新商品の販売ボリュームをまとまった形で把握することができていないと感じていました。

 今回の「トレンド」では、新商品の数はもちろんのこと、その販売額ボリューム(構成比)も含めてカバーし、新商品の重要性を「数値」で捉え直すことを目指します。

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 ▶年間の新商品数は約5000品前後

 まずは、この2年の新商品数を確認します(表1)。21年度は新商品合計で約4500、22年度は約6000弱となりました。前年比129%です。

表1:JICFS小分類 新商品数ランキング RDSスーパーマーケット全国
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JICFS小分類単位に集計してランキングし、各年上位10分類までリストしました。上位の5分類はこの2年同じで、6位以下との差も大きいです。確かに今売れランキングに上がってくる商品は、これらの分類がいつも目立っていますね。

 22年度はロシアのウクライナ侵攻に端を発する原料高、輸送コストの上昇、円安など複合的な理由により値上げラッシュとなりました。この激動の22年度は多くのカテゴリーで、内容量を減らすなどしてパッケージし直す、いわゆる「JAN変商品」が多数発生しました。商品数前年比大幅アップの要因としては、このJAN変商品が多く含まれていることが考えられます。(総計の前年比を大幅に上回る分類はその傾向が強いと思われます。)

 そんな中、本レポートの執筆中に、日経MJにタイムリーな記事を発見しました。原材料高を受けて、「商品数を減らして収益確保」の方向に動くメーカーと、マーケットの変化に対応して商品数を増やすメーカーがあるといった内容でした(2022年11月30日発行)。
 現在進行形としての動きが今後どう動いていくかは気になるところですが、本レポートではこの2年のデータから、現時点の姿を報告したいと思います。

 ▶求められるのは、新商品を予め意識した売り場づくり

 さらに、これら上位の5小分類を細分類に分解し、その細分類単位で22年度に100以上の新商品が出現した小分類に関してフォーカスしていきたいと思います(表2)。

まずは、全体の新商品数総計に占める、上位5小分類の構成比が85%以上であることに注目したいと思います。要するに、毎年出てくる新商品の大半はこれら5つの小分類に属するものということができそうです。

表2:上位5小分類の新商品出現数と構成比 RDSスーパーマーケット全国
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 特に、「生菓子」と「菓子パン」がそれぞれ全体の13%以上を超えるほどの新商品数となっています。
なお、JICFSにおける「生菓子」は、チルド売り場に置かれるような商品と、常温パン売り場に置かれる商品が6:4程度で混在していて分かりにくくなっています。実態はそれぞれ、チルドデザートとパンと考えた方が分かり易いかもしれません。どちらにしても、パン周辺と、チルドデザート周辺での新商品がとても多いということは間違いないところであります。

 その次に多いグループとしては、「半生菓子」、「カップ麺」、「スナック」、「チョコレート」までが構成比5%を超える細分類となります。ここにリストされたカテゴリーを担当するバイヤーは、日々発売される新商品を予め意識した売り場づくりが求められていることと思います。

 ▶新商品の売り上げ貢献度は?

本章では、これら上位の細分類における新商品の売り上げへの貢献度=販売金額構成比について確認して参ります。下図1は、RDSサプライヤーポータルの機能である「My属性」を使って、各細分類の新商品の販売金額構成比を集計したものです。
「My属性」機能とは、ユーザー単位で自由に属性を作ることができる機能です。新商品のJANコードをグルーピングし、以下のように各属性合計としての販売構成比を計算することができます。

図1.新商品 販売金額 貢献度推移 21年度vs. 22年度 RDSスーパーマーケット全国
(100%=各分類の全商品販売金額(PBを除く))
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 これらの新商品の多い細分類では、多くのカテゴリーで概ね販売金額構成比が21年度から22年度にかけて、2倍前後になっています。中でも「スナック」は3倍近く増加しました。多数の大手メーカー既存商品で、容量を減らしたJAN変商品を投入したことが影響していると思われます。全分類総計でもこの1年で2倍強となっているため、その他の細分類も程度の差こそあれ拡大した構成比の背景はJAN変商品があったと考えられ、全体的な傾向だったと見るのが自然でしょう。ここでは、あまりそのことにこだわらず、JAN変商品の影響のすくない21年度を基準値として売り上げへの貢献度を確認したいと思います。

 最も売り上げへの貢献度が高かったのは「玩具菓子」で、この2年とも60%弱と圧倒的でした。この2年で思い出されるのは『鬼滅の刃』、『BTS』、『すみっコぐらし』などの関連商品でしょうか。
当然の結果かもしれませんが、「玩具菓子」売場は定番商品自体が少なく、常に目新しさが求められ、一旦入荷した新商品を売り切ったら、また次の新商品に入れ替わる売り場であるということができると思います。またそれだけに、そもそもJAN変商品が少ないと思われ、この2年の貢献度にあまり変化がなかったのだろうと考えられます。

 「玩具菓子」に続く、10%以上のカテゴリー(21年度ベースで)は3つで、清涼飲料の「炭酸フレーバー」、「スナック」、「カップ麺」でした。
「スナック」と「カップ麺」は、商品数もそこそこ多かったので納得ですが、比較的商品数の少なかった「炭酸フレーバー」が、15%程度の貢献度となりました。「炭酸フレーバー」の最近の傾向は、各社の既存ブランドにその時々の旬の果実フレーバーなどを取り込んだ新商品を、期間限定で小刻みに繋げるという手法です。各社がこのような“季変わり”商品のためのスペースを、ある程度確保できているのでしょう。小売業とメーカーで年間を通じて新商品を置くスペースの確保する取り組みが結果的にカテゴリー全体の売上貢献に繋がるのではないでしょうか。

 一方、商品数として圧倒的に多かった、「生菓子」、「菓子パン」は、数が多い割に売り上げの貢献度は控えめで、7~9%前後となりました。相対的に一つ一つの新商品の貢献度が低いことを表していると言えます。

 これらの売場における新商品の扱いは非常に難しいですね。新商品開発側のメーカーの立場としては、次々に新商品を出し続けることがある意味「習慣化」している状況で、常に目新しい切り口を出し続けることはほぼ不可能でしょう。この2年間を振り返ると、話題となった商品と言えば、『ヤマザキ マリトッツォ』、『ヤマザキ ガリチョコブラック』、『フジ つぶあんほいっぷ(100周年)』などでしたが、この2年の確率でいうと、3/1417個。パン周辺の新商品でヒットを出すことがいかに難しいかを物語っているのではないでしょうか。。
また、多くのパン売場では店側から新商品をアピールするような展開にはなっていないように感じます。売る側として、来店客に「今月の新商品」であることを知らせるような工夫が必要ではないでしょうか。

 その他の上位細分類では、概ね7~8%程度の売り上げ貢献度です。これら以外の「その他」のカテゴリーが2%に届かないことを考えると、いかに上位の細分類で、新商品の売り上げ貢献度が高いかが分かると思います。従いまして、これらのカテゴリーの担当バイヤーは、新商品の対策を怠ると前年クリアが非常に難しくなるということだけは間違いないと言えるのではないでしょうか。

 なお、新商品発売前に、メーカーやベンダーと小売業がコミュニケーションを密にすることは、もちろん大切ですが、発売後も新商品動向のチェックは必須です。RDSの今売れランキングは、Twitterに日々連携していますので、どこからでもアクセス可能です。ご自身が担当する部門の新商品は常に目を光らせておきましょう。発売されてからでもやれることはたくさんあると思います。ご活用いただけると幸いです。

弊社トップページ:https://www.mdingon.com/
Twitter:https://twitter.com/Rds_Mdon

市場POS RDSデータを活用することで、市場動向を把握することができます。
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