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コラム・レポート

vol.43 変化への対応と新しい売り方への挑戦

気温の変化。価格も変化。

 皆さん、こんにちは。気温や天候の変化の激しい中、ご商売の調子はいかがでしょうか。ここ最近は台風に悩まされたり、急に涼しくなって売れる商材が変化したりで、対応が大変なのではないでしょうか。そんな中、秋冬の品揃え変更や棚替えも進めなくてはいけませんから、とかく忙しい時期です。
 しかし、前々から申し上げておりますように、日本の消費環境はシニア化、少子化へと変化し、震災の影響もあり節約、省エネがキーワードとなり、今現在は円高に影響を受けているといった実態があります。秋冬の新しい品揃えになった後も、これらの環境変化が商品動向に、どう具体的に表れてきているか、注意を払う必要があります。

 いまいちど注目しなくてはならないのは、『価格』です。主力NB商品の単価下落はますます進んでいるのが事実です。またかなりの価格競争力を持った小売各社のPBが増えてきていることにも注目です。これも消費環境の変化が拍車をかけていることに間違いありません。小売の心情としては、1円でも安い売価をつけて1個でも多く販売したいと思うのは当然のことですが、最近では、チラシで確認できるNB商品の売価が、以前と比較し1円2円安いというレベルの競争ではなくなってきている様相を呈しています。確かに消費者も同じ品質、容量、機能ならば、安く購入できるに越したことはないでしょう。しかし一昔前までは不毛な価格競争は消耗戦と呼ばれ、どちらかが根負けするか、経営が怪しくなるまで続けられたものですが、最近の競争で違うのは、一つには、物流や在庫管理を含めた仕入れの技術が向上したことにより売価を下げられるだけのコストの削減ができるようになったことがあり、いま一つはPBの進化によってNBの値入率を下げることが可能になったことも大きな要因です。

価格に頼らぬ価値提供を。

 とはいっても、価格競争することだけが小売業の目的ではないので、本来の流通業の目的である『豊かな生活』に貢献するためには、お客様である消費者に新しい提案、新しい商品の訴求を忘れてはならないはずです。前回も書いた属性の見直しによる商品分類を超えた横断的な品ぞろえや売り場づくりを促進するのも、その一つです。生活シーンに合わせた品ぞろえの再構築、用途や目的に合わせた売り場のゾーニングなど、今だからこそチャレンジしなくてはならない課題がたくさんあるように思えます。生活実態を見直して、親和性のあるカテゴリーを隣接させるなどして、価格訴求だけに頼らない販売点数の増加を狙うべきではないでしょうか。社会構造の変化や消費環境の変化によって今まで作り上げてきた『常識』が変わり始めていることを直視すべきでしょう。
buyer0043_1.jpg  例えば、シニアの視点で物を見たとき、商品や売り場だけでなく、パッケージデザインや裏面表記の文字サイズ、店頭のPOPの文字や大きさ、レシートの文字サイズや記載内容など、これからのマジョリティにとって優しい商品、店舗になっているかを総点検することも大切です。当然、棚割りもシニアを意識したフェーシングや陳列位置になるべきでしょうし、いわゆるゴールデンゾーンも今までと同じではいけないのかもしれません。ある意味、接客以外の部分でのサービスレベルの向上を目指さなくてはならないのではないでしょうか。

 ゾーニングを見直し親和性のあるカテゴリーを隣接させる、ということを提案し実行しようとすると、POS分析はさらに突っ込んだ分析をしなくてはならないと思います。欧米の事例や勉強会などではよく耳にする、日本ではなかなかできない『バスケット分析』とやらをやらないと仮説も立てられないでしょう。またID付POSデータを活用しての購買履歴分析も本気で考えないといけない時期に来ているのかもしれません。実際、やってみる価値はあると思います。棚割りがどのように変わるのか、エンドには何と何を一緒に積むべきなのか、購買行動のストーリーに一貫性が出てきそうです。また本当の価格弾性値を推し量ることも可能になるかもしれません。GMSの店舗では特に多様なカテゴリーを扱っているので、改めてワンストップショッピングという価値を考え直すことができるかもしれません。またホームセンターでは特定のカテゴリーで品ぞろえの幅と奥行きに強弱をつけ、時点の強みを強調できるようになるかもしれませんし、SM店舗では旬の食材を中心としたメニュー提案型の関連販売、複数個所展開が日常的になるかもしれません。リアル店舗だからこそできる買い回りの楽しみを提供し、ネット上での買い物との差別化が図れるようになるでしょう。
 もちろん価格は以前より安くなる方向に走っているという前提は外さずに考えざるを得ませんが、安さ以外の付加価値を提供するということについて製配販で一緒になって知恵を絞ってみたいものです。さらに言えば、単価ダウンを是としても、お互いに利益はきちんと残せるような仕組みや売り方、売り場の作り方を確立させるべきでしょう。

 いずれにしても、変化への対応と新しい売り方への挑戦をスピーディーに実行に移すことが大切、ということです。こんな環境でも、いくつかの小売業では増益を果たしています。その小売業たちは規模やレベルの大小はありますが、いずれも何かイノベーションを起こした企業です。メーカーさんでも同様だと思います。現状に固執せず、勇気をもって新しい挑戦やイノベーションを実践した企業は利益を出しているのです。それは、一カテゴリーの担当バイヤー、メーカー、問屋さんの担当者でも、『やる、できる』という気持ちを持って取り組めば、同じようにイノベーションを起こせると信じています。

ほとんどの小売業は下半期に入ります。みなさん、一丸となって頑張りましょう。

2011年9月29日 16:30

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