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コラム・レポート

vol.39 地域密着型のマーチャンダイジング

消費行動の変化

皆様、元気に頑張っていらっしゃいますでしょうか。 ひと雨ごとに暑くなってきてはいるようですが、まだまだ暑さも本格化せず、売場の作り方は難しい時期に入っているのではないでしょうか。特に食品や日用雑貨品では気温の影響をもろに受ける商品が多くありますので、その日の気温や天気の具合が売っている商品とフィットしているかいないかによって、売上を大きく左右するのが毎年この時期です。
とはいっても、夏のピーク時向けの商品を今顔出ししておかないと、ピーク時にお客様を吸引することができないのも事実で、実売りと近い将来の売上効果とを両立させておく、厄介な時期でもあります。しかし今年に限ってそういうことをやらなくてはならないわけではなく、毎年のことですから当然去年も同様に商品を提案していたので、活かすべき反省や改善点などを駆使して今年の売り場を考え直していくべきでしょう。

しかしながら、明らかに昨年と今年で違うことは、震災以降のお客様の消費行動、生活スタイルに大きな変化が生じているということを加味せずには考えられないということです。大きな意味ではエリアごとの対応を変える必要があるでしょうし、またはエコ、省エネ、節電などのキーワードの商品を中心とした売り方にシフトすることを考えなくてはならないでしょう。つまり、より一層の地域密着型のマーチャンダイジングが求められるはずです。

地域密着への取り組み

地域密着型のマーチャンダイジングというのは特別新しい発想ではなく、今までも言われ続けてきた考え方ですが、実践するのはなかなか難しかったように思えます。その理由は幾つか考えられますが、例えば、リージョナルチェーンならその地域に根差した商売が当然であり、改めて地域密着など考える必要はないのですが、大手、全国チェーンでは本部主導のチェーンオペレーションを基本としているために、地域の特性を例外として扱わざるを得ず、なかなかオペレーションに乗りづらく中途半端な対応に終わっていたということが挙げられます。 またその延長線上には、地域密着と考えられる品揃えが、全体の計画(本部での大手メーカーとの契約等々) を狂わす要因となる為に、あえて否定されてきたということもあったかと思われます。 buyer0039_3.jpg こうした現象は右肩上がりの成長期には大きな問題になることはなかったのでしょうが、今回のように消費行動に大きな変化が起きようとしているタイミングでは、エリア、個店ごとの取り溢しはお客様からの店舗の信頼を損ねる危険性が大きいので、我が店、このエリアの消費動向をマーチャンダイジングに的確に反映させることが大切ではないかと考えます。

前回、店ごとのポジショニングを再確認することについての重要性を記載しましたが、その次には分析の結果に基づいて同類の特性を持つ店舗をグループ化(クラスタリング)して、商品や販売の政策を再考する基礎資料とすることが必要でしょう。
まずはエリアごとの消費環境を把握し、例えば今年の環境を考えれば、電力不足の状態はエリアごとにどのように予測できるのか、原発の影響はどの程度加味しておく必要があるのか、節電の関心度合いはどうなのかなど、エリアの特性として考えましょう。次に各店舗のポジショニングを集約してクラスターを作り、販売方法や品揃えの変更などを再構築するといった手順で見直しをかけてみるべきでしょう。

こういった見直しは、ある意味時間との勝負でもあります。スピード感を持って対応しましょう。また今一つ大切なことは、あくまでもチェーンオペレーションを前提とした地域密着ということも考えなくてはならないということです。何でもかんでも地域や店舗に権限を与えてマーチャンダイジング活動をしていてはチェーンとしての資源や資産の効率に無駄が生じます。ですから、地域密着を考えるにあたっても、幾つかのルールは必要ではないでしょうか。
一つは、全体の何%程度を地域密着型の商品、品揃えで対応するかということです。1,000SKUの品揃えがあるカテゴリーの中で何SKU前後を地域商材の品揃えとするのか、勿論画一的な割合では不具合を生じる可能性もありますので、ある程度の余裕を持った決め方をしておけばよいのではないかと思いますが、全くルールもなしに考え始めると収拾がつかなくなります。

次に、フェーシングや陳列位置を地域ごとに変えることでも、地域対応ができる場合もあるということを認識して取り組むということです。同じSKUの品揃えであっても、地域によって売れ数が違うのであれば、それぞれの地域の売れ筋商品をゴールデンゾーンに持ってきてフェーシングを拡大することで地域対応の第1段階は完成するのです。今までチェーンの本部がなかなかやりたがらなかったのは、陳列台帳のパターンを増やすことによる作業場の弊害が多かったために、実際の陳列のチューニングは店舗に任せていたのです。しかし今は台帳管理もシステム化が進み、精度も高くなっているので、その気になれば必ずできるはずです。まずは実験的にでもどこかのエリア、クラスターで地域密着型の陳列台帳を作成して実験してみることが大切ではないでしょうか。

ルールという意味では、実は最も重要なのは本部と地域との役割分担を明確にし、権限委譲のレベルをはっきりさせることです。これが明文化されている小売業は意外と少ないのではないでしょうか。その理由は最終的な数値責任まで明確に出来ないからです。つまり売上目標が98%で終わったとしたら、未達であった2%のうち本部の責任は? 地域のウェイトは? などあまり意味のない議論をしなくてはならないからです。しかしこれほど地域密着が求められているのであれば、月度の販売計画の立案段階で本部仕入のメリットを生かす部分、地域の仕入れで対応したほうが効果効率の高い部分を議論して、あらかじめ役割分担と権限を決めておくべきでしょう。数値責任については後日ゆっくり考えるとして、今は足元をしっかり固めることのほうが重要ではないでしょうか。

成功事例の横持ち

地域密着という意味で、 buyer0039_5.jpg もうひとつ別の視点で大切なことは、成功事例の水平展開のスピードを上げることです。ある店舗、あるエリアで成功したことを素早くその他の店舗やエリアでも導入し、店舗間での格差を薄めることです。それがチェーンである強みなのですから、成功事例の素早い水平展開についてのノウハウ、仕組みを構築することで、そのエリア、さらにはそれが拡大して全国的に強みを発揮できるようになるはずです。
チェーン企業は本来仕組みで動くはずですが、残念ながら、売り場の担当者、店長、エリア長等の知識、経験、力量によって業績が大きく左右されるということは避けられません。それはGMS型よりも小型SMや専門店チェーンのほうが色濃く出るかもしれません。知識の集約がチェーンの成長のカギを握っているのかもしれません。また今後はそういったノウハウ、経験値をうまく積み上げ活用できる仕組みを構築した企業が勝ち残っていくのかもしれません。

今回は、小売り側主体の話になってしましましたが、全国に販売網を持つメーカー、問屋さんでも同じことが言えるのではないでしょうか。本社本部の計画だけである程度の業績が見込めるほど簡単な環境ではなくなっているので、様々な業種業態で地域密着というキーワードは重要性を帯びてくるのかもしれません。

皆様の改善、活躍に期待します。頑張りましょう。

2011年6月 1日 17:30

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