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コラム・レポート

vol.23 2010年が明けましたが・・・

 皆さん、ご機嫌いかがでしょうか。

 2010年も明け、新たな環境が開けてくる、そんな年としたいものです。
 しかし、この年末年始の状況をみると必ずしも喜ばしいことはないようです。各社、各業態とも全般的には年末から前年割れが続き、その大きな反動も年始にはなく、いったいどこで何を購買しているのか、全く分からない様子です。政治も経済も混迷の度合いを深めているといったところでしょうか。景気の2番底がやってくるという暗いうわさも絶えません。自分の生活を振り返ってみても、特に昨年と比べて大きく何が変わったということはないのですが、残念ながらビジネスとしては厳しい状況が続いています。
 とはいっても時間は過ぎ去るもので、今皆様は春夏の棚割作業、真最中といったところでしょうか。
 今年はどのような棚割を提案するのでしょうか。また、今期提案しようとしている棚割の『へそ』は何ですか。環境のよろしくない中、どこの小売企業でも売上、利益を維持するだけでも大変な状況です。そんな中、皆様が提案されようとしている棚割はどのように評価されるか、期待と不安が入り混じった感じです。

 ではこんな時、小売業はどのような提案を期待しているか、少し考えてみましょう。

こんな時代の棚割提案

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 まず間違いなく言えることは、数字がどこまで読み込める棚割であるかということです。つまりこの棚割によって、どの程度の販売点数の向上が見込まれるか、売上がどう変化するか、利益がどこまで確保できるかということが、きちんとシミュレーション、推定された棚割であるということが重要ではないでしょうか。勿論、今までも皆様が作ってきた棚割だって、当然売上の伸びが期待できる棚割を作られてきたわけですから、今更当たり前のことを何故、と思われるでしょうが、実際に提案の中で表現したことはあるでしょうか。

 ご周知の通り、売上の伸びが期待できない低成長の時代で有効な打ち手を模索している中、大きく伸びを期待するということ自体が現実離れと言えるでしょう。微増でもよいから、前年確保だけでも良いから、何とか数字を維持したいと、みんなが考えています。だからこそ新しく作ってみた棚割からどの程度の数字が期待できるのかを試算してみる必要があるのです。

 方法論としては色々あるとは思いますが、例えば前年同時期の販売点数を新しい棚割に当ててみて、フェーシングを広げた商品の売れ数を1.2倍にしてみて、新製品の売れ数はある程度の見込みで当てて、さらに直近の趨勢を加味して試算してみたら、その棚割は、少なくともこの程度の数字は確保できるだろう、という仮説は導き出せるかと思います。
あるいはこの棚割なら以前のものよりローコストオペレーションに貢献できるというものに仕上がっているのか、たとえその試算通りにならなくとも、その棚割にどの程度の期待が込められるのか、この棚割で行こう、という判断基準を与えられるようにはなると思います。つまりその棚割に決める心の担保となるものが欲しいわけです。

 本来ならば、この作業は小売業が実施しなくてはならない内容と思いますが、小売業も混沌とした状況の中、アイデアや打ち手が見えてこないのが正直なところです。言い方を変えるならメーカーさんの新製品に期待するところが大きくなっているということでもあり、売り方について皆様のお知恵、お力をお借りしつつ、新しい協業の仕組みを構築したいと考えているバイヤーは多くいることでしょう。

 また以前にも申し上げたように、バイヤーの責任数値はほとんどの場合、複数カテゴリーまたはカテゴリーの上にある分類の数字ですから、その棚割がどの程度バイヤーの責任数値に対して貢献できるかをイメージさせる棚割になっていて欲しいということです。ですから説得力のある棚割でないと、今の世相ではなかなか採用されないといえるかもしれません。

 その為には、幾つか大切な準備があります。
 一つは、観察-分析-判断をしてみることです。つまり、昨年実施した棚割とその結果となるPOSデータを突き合わせて問題点を明確にすること、そして昨年の環境や売り方、競合の状況などを加味して、何故その結果になったかを推定すること、最後にそれらを改善するための方策を今年の棚割に盛り込むことです。これを愚直にやってみましょう。間違いなく昨年と同様あるいは何も新機軸のない棚割なら数字は落ちると思ってください。

 二つ目は、事前にバイヤーに今期実現したい棚割コンセプトを持っているか、何を達成したいかをヒアリングしてみることです。せっかく頑張って作ってみた棚割がバイヤーの考えとずれていたら採用はされないでしょうし、やり直しては時間切れで採用されずということになりかねません。皆様の担当バイヤーが棚割に対して白紙状態の方でしたら話は別ですが。

 相手が語ってくれるバイヤーなら必ず確認してください。—バイヤーが自分の業態の特性をどのように考えているのか、—来店客のプロフィールをどの程度把握していて、それを棚割にどのように生かそうとしているのか、—価格戦略はどのように考えているのか、つまり商品構成グラフを左寄せにするのか、左右バランス良くしようとしているのか、—また品揃えの方針は何か、SKUを増やすのか絞り込むのか、等々要確認事項はたくさんあります。仕事のスピードと精度を上げるためには無駄を省くことが大切です。

自信を持とう、作ろう

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 短い文章でハードルの高いことを書いてしまいましたが、最初からパーフェクトを狙わなくてもよいと思います。まずは「やってみる」ということです。やり続けて検証し続けて精度は上がってくるものです。何もしなくては何も成果は得られません。机上で議論を重ねるより、ある程度の見込みを持って実行に移し、反省してみることが大切だと思います。そこから次につながる発見があると信じてください。
 仮説-実験-検証です。Plan-Do-Seeです。

 そしてその繰り返しが自信につながると思います。また提案する棚割にも自信を持てるように、しっかりと根拠を固めるように努力してみてください。根拠のない棚割だから自信が持てないのではないでしょうか。
 あるいは数値で裏づけされた棚割なら、自然と説得力も増しますし、提案のときも自信を持って話ができると思います。もし今、棚割作業の主幹を取れていないのであれば、ここが一発逆転のチャンスになるかもしれません。

 また、提案した棚割で見込んだ数字がいかなかった場合どうするんだ、という心配が付きまとうかもしれませんが、棚割だけが数字を作っているわけではありませんので、そのような心配を始める前からする必要はないと思います。棚割と同時に、商品の価値やメッセージをどう伝えていくか、売り方提案も沿えてプレゼンしてみてはいかがでしょうか。必ず理解してくれるバイヤーはいると思います。まずは行動です。

 皆様のがんばりに期待しています。


2010年1月28日 16:49

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