コラム・レポートのアイコン

コラム・レポート

vol.10 最近話題のメーカー間コラボレーション

さて、最近はメーカー間のコラボ商品に注目が集まっています。

皆さんもご存知のアサヒビール㈱とカゴメ㈱の提携による『アサヒトマーテ』の発売が話題を呼びました。この商品は、両社の強みを活かして、新機軸の商品を開発した良い事例だと思います。また以前にはサントリー㈱と福寿園の「伊右衛門」もコラボによる大ヒットと言えるでしょう。

アサヒは、酒類、飲料を中心とした「食と健康」を事業領域とし、カゴメは「自然の恵みをお客様の健康的な食生活に役立てる」ことを理念として、野菜果汁、乳酸菌飲料などの商品開発を行っています。

この両社が成熟した食品市場、お客様のニーズの多様化に対応すべく、新しい価値の提供、安全・安心の提供と競争力強化を目的に商品の共同開発を実施したわけです。
またロジスティックスでもチルド物流の効率化という面から、両社にとって良い効果を狙ったとも聞いています。

コラボに期待するもの

本来コラボレーションでは、お互いの弱みをカバーしあいながら、強みを活かして新たな市場の活性化、サービス、商品の開発・提供に踏み出して、シェアの拡大を狙っていくものでしょう。
その考え方で実現したコラボレーションなら、消費者視点からみてもご利益の多いアウトプットが生まれてくると思いますので、小売の立場からも歓迎すべきものと思います。
しかし考えていただきたいのは、消費者にとって価値のあるサービスや品質が備わっているということが重要であるということです。 何のためのコラボなのか? 企業と企業が競争に勝ち残り、生き残っていくためのコラボであるとともに、消費者に対して付加価値を提供できること、社会的なコスト削減につながる、地球環境に貢献できる取り組みになっている、などなどコラボレーションすることの意義や価値は沢山あると思いますが、企業側だけの理屈になっていないことを望みます。

右肩上がりの時代なら、ライバルとまではいかなくても、同業他社と提携して物づくりをするくらいなら、新規事業として立ち上げ、自社内で解決する方法がとられたでしょう。また少し前なら、買収や吸収合併という形で、自社の弱みをカバーする方法がとられたでしょう。
しかしながら、今の時代では、そのどちらも、コストアップの要因になったり、リストラという社会的にネガティブな方法で効率化をせざるを得なかったり、生み出す価値とそれと引き換えに失う社会的資産も大きいことから、両社にとって少しでもマイナスを減らすための方法として、コラボレーションという方法が選択されるケースも少なくないのではないでしょうか。

新しいカテゴリーの創造

さて、小売業の立場から見て、メーカー間のコラボは、その商品や価値、サービスが新たなカテゴリーの創造、または市場の活性化に結びつくのであれば、非常に喜ばしく、快く受け入れられるものであると思います。つまりカテゴリーマネジメント同様、お客様のニーズに対して、的確に対応し答えを出しているものであるならば、それは十分売り場の中心的存在となりうるものだといえるでしょう。
カテゴリーマネジメントは、カテゴリーの定義、役割、戦略、戦術(品揃え、棚割、価格、販促)を研究して、仮説に基づき売り場づくりを変え、シェアの維持、拡大を狙うものですので、最終的には戦略、戦術を具現化する商品そのものが品揃えされていなければ意味がありません。
ですから、コラボによって生まれた商品が帰納法的に、新しいお客様ニーズの空白を埋めるカテゴリーを創造するものであるならば、カテゴリーマネジメントと同じ狙いを達成することができると思います。

小売業の中には正直、口先だけの取り組みに終始し、メーカーさんからいくら調査研究を重ねた提案をしても、売り場で具現化されない企業も少なくはないでしょう。それならば新規開発の商品(コラボによって生まれた商品)を入り口として、新しい提案型の売り場を作っていく方法も決して間違いとはいえないと思います。要は「新しい差別化」や消費者にとっての「目新しさ」があり、お客様が価値やサービスを感じるくくりが存在することが重要と考えます。

仮に、烏骨鶏の卵と魚沼産コシヒカリでコラボした「タマコかけご飯」があったとしましょう。確かに、「食」としては新鮮さ、品質の高さ、安全・安心、などでは明らかに「差別化」を提供することが出来るでしょうが、「タマゴかけご飯」のヘビーユーザーにとって、それは果たして特別な価値観を提供できることになるでしょうか。「タマゴかけご飯」のファンにとっては、一般の食材を使って、なおかつ「タマゴかけご飯」のステータスが上がるような、違う付加価値を求めるはずです。
つまり提供側同士の自己満足に終わらないように、コラボに関しても充分なマーケティングが必要ではないかと思うのです。
コラボすることによって、「新しさ」、「レス(コスト、時間、環境対策)」などの価値が誕生することを目指した商品であるならば、消費者にとっても小売にとっても、ありがたい商品となるでしょう。

ビジネスモデルとして

私が思うに、一過性、話題性で終わるコラボレーションでなく、新しいカテゴリーの創造であったり、社会的コストの削減効果があったり、何かしら付加価値を生み出すコラボであり、新しいビジネスモデルとして、継続的に取り組めるような中長期的な計画の一環として、世に送り出された「コラボ商品」であってほしいのです。
小売側としても、その計画に共感でき、将来のゴールが見えるコラボ商品であるなら、新しいカテゴリーを設置して、最初の数字(売上、販売点数、利益)に惑わされること無く、我慢して売り続ける姿勢を取れると思います。

その将来のゴール、新しい付加価値が理解も共感も出来ない「タマゴかけご飯」的な内容であれば、小売業も積極的にその商品を展開することは難しいでしょう。
逆に、メーカー間コラボが小売の共感を得て、新たなカテゴリー創造に発展し、カテゴリーマネジメントが始まることにより、それが更に小売も巻き込んだコラボとなれば、サプライチェーンマネジメントにも発展していく可能性も秘めていると考えると、きちんとしたマーケティングにもとづくコラボレーションは非常に夢のある取組だと思います。

またご存知の方も多いとは思いますが、セブンイレブンさんでは、自らが間に入り、積極的にメーカー間でのコラボレーションを仕掛けています。これは、それぞれの強みを活かして、新たな価値創造を行う先駆者的なビジネスモデルであると思います。さすがだと思います。

これからの世の中、小売業界でも合併、統合、異業態同士の提携などが進み、またメーカー様でも更なるコストの削減や環境への配慮が進む中、NB商品でも PB商品でも、流通業に携わるメンバー同士が、お客様のほうを向いて、技術の持ち合い、知恵の持ち合いで、新しい価値創造に向け努力していくシーンが増えることになると思います。
それが常態化すれば、新たな流通革命の入り口が見えてくるような気がします。
今後のコラボレーションには期待を込めて、注目です。

2007年10月22日 16:01

お問い合わせ

    • ご購入前のお問い合わせ   :
    • 03-6908-7878
    • 保守契約に基づくお問い合わせ:
    • 03-6908-7817

受付時間 9:00-18:00
(土日祝日・年末年始・当社休日を除く)

ページトップへ