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コラム・レポート

vol.8_2 バイヤーと営業マンの座談会(後編)

みなさん、こんにちは。『バイヤーの独り言』の編集担当です。

お待たせいたしました。前回に引き続き、今回もバイヤーと営業マンの座談会(後編)です。私事ですが、いやぁテープ起こしは大変でした。今回もいろいろと本音のところを話されているので、どうぞご期待ください。では、続きです。

※以下、営業マン1→ 営業マン2→ バイヤー→ 編集担当→とさせていただきます。

:バイヤーさんはどれくらいのペースで商品部等の会議に参加しているんですか?

:会議は毎週あるから、毎週参加しているよ。

:それはカテゴリーの売上とかが議題になるんですかね。

:そうだねえ、お客さんの状況とか、今週の進捗とかが一番かな。

:今週の進捗とは、企画の状況といったことですか?

:そう。それで来月、再来月はどうするか、とかね。そして今週の企画の売上がどうだったか、とかだね。

:僕たち営業マンが『定番にこれを入れて欲しい』、『特売の企画にこれを入れて欲しい』って提案した時の決定権は、バイヤーさんにある訳じゃないですか。
で、ですね。僕らは基本的にカットされたくないんですけど、カットの基準って何ですか?

:売れ数が重要だね。だけど単純に売れ数だけじゃなく、品揃えを決める時はマトリクスにあてはめて、各項目に1SKUでもいいから入るようにして決めているよ。単純に売れ数・額だけを見ると、マトリクスの端っこの商品はABCランクで見ると絶対Cになるじゃない? でも、その商品をカットすると、品揃え的に欠落になる訳よ。だから、各項目の下からカットって感じだね。

:今、お聞きしたお話が正しい品揃えだと思うんですけど、そういった考え方っていうのは研修などでバイヤーの人たちには浸透しているものなんですか?

:浸透しているかどうかは別として、教わってはいると思うよ。

:ということは、実際に商談の時にそういう考え方を教わっているのに実際に実行していないバイヤーさんもいるということですか?

:品揃えの考え方なんてものは分かっていて当たり前だと思うんだけど、実際にはマトリクスすら作れない駄目バイヤーもいて、そういうのが単純に売上げの下からカットしちゃう場合ってのもあるね。それでどんどん売り場が貧相になっていくんだよ。

:そういった駄目バイヤーさんは、ちゃんと品揃えの考え方が分かっているバイヤーさんと交代した方がいいと思うんですけど、何でそういう人間がそのポジションに残れているんですかね? 駄目バイヤーさんでも売上を上げられるものなんですか?

:まぁ、売上は伸ばしているんだろうね。だけど、その売上にその人間の力がどれ位影響しているのかだよね。全体的に追い風なら何もしなくても売上が伸びることもあるからね。

:市場が伸びてれば伸びると?

:そうだね。10年前とか飲料で水がバーッと伸びたけど、その時のバイヤーが全員優秀だったのかというと、そりゃ違うじゃない。たまたま水に火がついて、バーッって市場全体が伸びただけでしょ。だけど、その時のバイヤーってのは、何もしてなくても評価されるんだよ。

:バイヤーさんの社内での評価は、そういう市場動向も考慮されて評価されてるんですか? それとも単純に前年比だけなんですか?

:まあ、単純に前年比だね。実体験で、あるカテゴリーを扱っている時、原材料費が上がって商品を一斉に値上げした時に、売上のパイ自体がバーッって下がっちゃって、それに引きずられて俺の数値も下がったことがあったのよ。でも、他のスーパーよりは頑張ってたんだけど、社内で見ると俺の数値は低いワケ。他社や市場とは比較してもらえないのよ。『あんたは予算未達です!』で終わり。

:えっ、それだけですか? きついっすね。

:そう。『昨対98%とはいえ、他スーパーは85%だぜ!』って心の中では思うよね…。

:でも会社の制度上そういう評価っていうだけで、実体はみんな分かっているんですよね?

:上司は分かってくれていると思うけど、それが会社の評価制度だからね。
だけどバイヤーっていうのは、そういう悪条件下で何をするかが重要だと思うね。
バイヤーにも、死ぬ思いで商品を突っ込んで、安売りして、売上を維持して、利益は落ちるけど形にだけはするタイプや、苦しい時期は何をしても売上取れないから、来年・再来年のことを考えて売り場のテコ入れといった地味な努力をするタイプなんかがいるけど、優秀なバイヤーは苦しい時にこそ何かをしてるよね。
俺の場合は売り場の強化をしていたからさ、追い風になった時はそれが全部活きてきてたね。それに、他カテゴリーの売上が下がっている時に、自分の担当しているカテゴリーだけは横這いで売上を維持できたりすると、なんか足腰が強くなってきてるなと実感できるね。

:ちょっと話変わりますが、棚割のシーズンだと新商品がガンガン出て来るじゃないですか。メーカーの商談の切り口としては、差別化がどうとか『こんな原料を使っています』とか、みんないい事ばかりアピールしてくると思いますが、その中から今季の新製品はこれだ!と決める時のポイントって何ですか?

:そうだね、5割はバイヤーの眼力だと思うよ。それとあえて言うとすれば、CM。それが2000GPR入るのか、5000GRP入るのかとかいった基準とか。それと品揃えのマトリクスを頭の中に持っているわけだから、この商品はどこに入るのかな?とバーッと決めるわけ。これは新しいジャンルでマトリクスにないから、取り扱っておいた方が良いな!といった具合に。 完全に競合する商品なんかは、これは逆に決めない方がいい。 例えば、Aメーカーが『これを持って来ました!』、Bメーカーが『これを持って来ました!』って時に、本当に商品が良く似ていて、名前やらパッケージやらなんかが似ているなんて時は、俺は決めないで、両者に『幾ら?』って聞く。そして『Aメーカーにしようかな~。』と言ってBメーカーにもう一回『幾ら?』って聞いちゃう。

:ということは、メーカー同士が似た新商品を出してしまえばしまうほど、メーカーにとっては不利ってことになりますね。

:そうかもしれないね。だけど俺の場合なんかはどっちにしろ、両方並べることが多いんだよね。まぁ、並べるにしても並べないにしても、バイヤーとしてはそれがオイシイわけ。値段で競合させるわけだからね。それで発売後1週間ないし1ヶ月くらいで勝負が見えてくるから、その時点でどちらか外しちゃえばいいからさ。

:1週間ないし1ヶ月ということですが、カットの判断期間が1週間ないし1ヶ月という認識でいいんですか? 1週間たたないでカットになる時もあるんですか?

:特売要素が入るから難しいんだよね。新製品って最初エンドに積んだりするじゃない? だから最初の1週間の数字はそんなに当てにならないけど、大体1ヶ月すればどっちに軍配が上がったか分かるね。

:ということは、せっかく定番に入れたのに、1ヶ月売れなかったらカットされちゃうという事ですよね? その後に入れる商品は「市場のランキング」、「話題になっている」とかっていうことで判断して追加するんですか?

:そういう場合もあるけど、新たに追加しないで、既に並んでいる商品のフェイスを拡げるとか、ケースバイケースだな。
例えば、シーズン当初はそのカテゴリーに100 SKU あったけど、シーズン末期には70 SKUにまで減ってしまったり。でも売れ筋のフェイスがダーッっと拡がっている方が逆に売上取れたりすることもあるからね。必ずしもカットしたからって、別の商品で穴埋めする必要はないと思うよ。

:最近ではメーカーも小売業からPOSデータをもらえたりするので、週単位で売上がわかったりするんですけど、『他社の売上が良くない新商品をカットして、自社製品で売上の見込めそうな商品を入れませんか?』と商談はありですか?

:他社商品をカットした方が良いよってことはメーカー側からは言って欲しくないね。必要なときは言い方を変えた方が良いよ。そんなことはおそらくバイヤーも分かっていると思うけど、メーカーには言われたくない。『ちなみにAスーパーの品揃えを見ると、あれは入ってないけど、これは入ってますよね。』と言った感じで遠回しに。直球を投げられると打ちたくなっちゃうし。

:僕が複数の新商品を紹介しに行った時、バイヤーにどっちかしか入れられないと言われることがよくあるんですよ。で、ですね、うちの会社の方針で優先順位の高いほうの新商品を採用してもらったんですけど、売れなかったってときに『こっちの新商品と差し替えてもらえませんか?』と自社製品の中でストレートに言うのはどうですかね?

:自社商品ならオーケーだよね。実際問題、自分で決めた品揃え商品をカットするのは結構勇気がいるんだよね。いったん採用したものをカットするのはそう簡単には踏ん切りがつかないから。『これは採用されませんでしたが、こんな数字を出してますよ』という商談はいいと思うよ。

:売上の悪い自社商品をカットして、市場で伸びている他社商品を入れましょうよといった提案をする営業マンはいますか?

:ゼロではないよ。『他社製品ですけど、あれは入れた方がいいですよ』とか、逆に自社商品なのに『あれ売れてないですよ。やめておいた方がいいですよ』って言う営業マンが実際にいたよ。

:実は長期的に見るとそういう提案って信頼があって、長い商売に一番良いってことになるんですか?

:それは間違いないね。さっき話した営業マンとは違うカテゴリーだけど、あるカテゴリーのメーカーさんたちは、お互い仲間意識みたいな感じでそういう提案が多かったね。

:そのカテゴリーの売り場自体を広げてもらいたいとか、そういう考えがあるんでしょうか?

:でもそれは無理な話で、物理的にそのカテゴリーだと棚が6本か8本とか決まっているわけだから、それ以上広げても効率が悪くなるだけだってことをみんなも分かっているしね。

:そうなんですねぇ。えーと、じゃあ営業マンで意思を伝える人と、情報だけ伝える人っていると思うんですけど、バイヤーとしてはどうなんですか?

:情報や説明だけでは判断できないからね。やっぱり自分の意思を伝えてもらわないとね。
自分の失敗事例で一つあるんだけど、あるメーカーの営業マンが新商品の紹介に来たんだよ。で、その説明を聞いただけだとその商品の優先順位は下のほうになっちゃってたわけ。でも、店舗廻ってるその営業マン自体は優秀だったらしくて、その商品の良さを店舗担当に上手く説明して、何店舗かではその商品を定番とエンドで取り扱ってたらしいんだ。そしたらバカ売れしちゃってさ。それを聞いてこっちも慌てて商品を急遽仕入れてなんとかしたってことがあったよ。
営業マンの努力とバイヤーの目利きの力を足して始めて、いい品揃えってものが出来上がると思うんだよね。だから自分とこの商品はきっちり理解して、ちゃんと自分の思いを込めて説明して欲しいな。

:そうですね。営業マン的には数字を上げなきゃいけないから、新商品があるとノルマでそれを売らなきゃいけないっていうこともあるけど、これは「売れる」「売れない」ってのを肌で感じることもあって、それを正直にバイヤーに説明するかどうか葛藤することもあります。

:そうそう、本社からは『とにかく全部取り扱ってもらえ!』ってなんて言われる。そんな中で『いや、私はこの商品はどうかと・・・』っていうと社内から叩かれますからね。だから僕は社内では『ハイハイ』と言って流して、現場では自分で選別してやってたりするんですよ。なんか売れないな、と思ってるのにゴリ押しするのもどうかなと思ったりして。

:さっきも話した営業マンなんだけど、『私もサラリーマンなんで、この商品を売れって言われて持って来ました。申し訳ないけど1ヶ月でカットしていいので、1フェイスだけでも置いてくれませんか?』っていう人がいたねえ。

:あ、それって良いですね。理想です。もっとも、バイヤーと人間関係できてないとそんなこと言えないですけど。

:でね、『全店で無理なら某店舗だけでもどうでしょう? 某店舗の近所に営業担当の専務が住んでるんですよ。本当に1ヶ月でカットしてもらっていいです。私も売れない商品のために商談回数を増やすのもいやなので』って言うの。

:凄い! 確かに。それで会社に戻って『登録できました、定番に入りました』って報告できれば社内的にはOKですしね。

:そこまで言われたらしょうがないよなって思うしね。別会社なんだから仕方のないこともあるけど、せっかく何かの縁でお付き合いしているわけだから、お互いのメリットを追及しながらもさ、メーカーさんや卸さんとは一緒におもしろい仕事がしたいなっていつも思ってるんだよ。


:と、いうわけで「バイヤーの独り言(スペシャル企画:座談会編)」はここでおしまいです。
前、後編2回にわたってのバイヤーと営業マンの座談会はいかがでしたでしょうか? バイヤー、営業マン、それぞれの立場での本音がかなり見えたのではないかと思います。
私が感じたのは、なんだかんだ言ってもこの方たちは仕事に真摯に取り組んでおられるんだな、ということでした。いやいや本当におもしろく、為になる会でした。皆様方どうもありがとうございました。ちなみにこのあと皆様方は、高田馬場の栄通りへと消えて行かれました。また、機会がございましたらこのような企画を催したいと思っておりますので、どうぞご期待ください。

2006年8月31日 17:20

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