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コラム・レポート

vol.3 品揃え計画の考え方

みなさん、こんにちは。
前回はバイヤーって品揃え(商品の取り扱い)を決めたり、商談している以外に社内的にどんな役割、仕事があったりするのかをご理解いただこうと思い、商品知識を社内に浸透させる事についてお話させていただきました。もちろんそれだけではなく、バイヤーの仕事にはまだまだ沢山の側面があります。それらについては、後々触れていきたいと思います。

さて今回は、皆さんが一番気になる「どうやって商品を取り扱う、扱わないを決めているの?」について、少し触れてみたいと思います。

そもそも商品を取り扱う(入れるか、入れないか)の意思決定、判断基準って何なのだろう? あまり小売業と深い関係作りが出来ていない方々には謎が含まれている分野だと思います。
しかし、1品定番に入るか入らないかで皆様の成績を大きく左右する事になる重要な意思決定でありながら、そのプロセスはなかなか公明正大に知らされることは無いかと思います。(ましてや貴方が担当する企業の店舗数が多ければ、それだけ定番1品の重みは増して来るでしょう)

ただ、始めに申し上げておきますが、品揃え計画の考え方や組み立て方は
【1】バイヤーのスキルと経験(時に人間性、情熱、思い入れ)
【2】 カテゴリーの特性
【3】 業界の商慣行

によって差異がありますので、必ずしも今回私が申し上げることが皆様の営業活動に明日からフィットする内容にはならないかも知れませんが、その点はご容赦ください。
しかし一般的に言って、スーパーやチェーンストアで教育を受けたバイヤーが普通に持っている頭の構造とはこんなもんだよ、という点ではご理解いただけるかと思います。

☆☆ 概要 ☆☆

品揃え計画を組み立てるステップは、大まかに言って以下のようになるでしょう。

ステップ1 カテゴリーの方向付け;

全カテゴリーの中でそのカテゴリーをどのように位置付けたいのか。どういう方向に持って行きたいのか。
⇒売上をもっと伸ばすためにスペースの拡大、SKU数の拡大を図るのか、または平均単価を下げて行きたいのか。その逆に、売上は最低限前年維持でスペースは縮小傾向、SKUは絞込み、平均単価は変えずに利益は確保できるように持って行くのか。

ステップ2 サブカテゴリーの見直し、構築;

そのカテゴリーの中で、どのサブカテゴリー(品種)を全体の牽引役として位置付けるか。どのサブカテゴリーまで品揃えに含めるべきか。
⇒サブカテゴリーは品揃えの幅を決定するための重要な要素。単純にPOSデータのABCだけを見ていては、最終的に商品を店頭に陳列した時にサブカテゴリーに偏りが出て、お客様から見て選択肢の少ない売場が出来上がってしまう。

ステップ3 価格帯の決定;

いくらからいくらまでの商品を品揃えするのか。
⇒NB商品主体のカテゴリーではあまり定番の価格では差別化は出来ませんが、もしバイヤーがそのカテゴリーを強化し、延ばしていこうと考えていたら、そのカテゴリーに含まれる最低価格の商品(オープニング価格という)を新たに発掘し、安さのイメージ作りをするでしょう。また高級感、こだわり感を出そうと思えば、今まで品揃えしていなかった高単価の商品を求めて品揃えに含めるでしょう。これらの意思決定は1にも2にもステップ1でのカテゴリーの方向付けに左右されます。

ステップ4 SKUの選定;

最終的に店頭に並べる商品を決定するのは、比較的後の段階となります。ステップ3までで、品揃えの考え方や品揃えの幅と深さを決め、その枠組みの中で方向性にあった目標を達成するために必要となるSKUを選定するのです。ただ闇雲にメーカーさんと商談し、条件の良し悪し、ピンと来た商品から優先的に品揃えに含めているわけではないのです。

ステップ5 棚割の作成;

当社として品揃えすべきSKUの選定が終わったら、棚割上で実際に商品の提供方法を考慮しながら品揃えの微調整を行います。店舗の大きさによって、使用できるカテゴリーのスペースも異なりますから、全ての店舗、パターンで1種類の品揃えでまかなえるわけではありません。

最近の傾向として、カテゴリーマネジメントの発想が一般的になってきましたので、ステップ1と2が重視される傾向にあります。 また冒頭で申しましたように、品種や業界によって多少の差異がありますので、ステップ4と5を同時に行う、あるいは簡略化してしまうという場合もあります。

★ただし、ここで考えていただきたい事は少し前でしたらステップ4と5の段階でバイヤーに強烈にアピール、プッシュする事で商品を定番化することはある程度可能でした。しかし、小売側が今の時代にメーカーさんのご協力を得たいのは、ステップ1と2です。メーカーさんのお知恵と情報力によって、まず来期、我がカテゴリーをどうすればよいのか、ここで信頼できるパートナーを求めているという事をご理解ください。このタイミングでバイヤーと色々話や提案が出来るようになりましょう。

☆☆ ステップ1 ☆☆

前々回にお話した内容の繰り返しになりますが、小売業ではバイヤーであれ、売場の担当者であれ、部門やカテゴリーの数値に対して責任を持っています。ですから、商品の品揃えを考えるときには、

「次のシーズンはこのカテゴリーをどの方向に持って行きたいか」、「全体でいくら売らなきゃいけないか」

が最初に来ます。
そこで考慮する項目として最低限以下の項目は押さえます。

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  • 昨年の実績と反省
  • 直近のトレンド
  • メーカーの新製品情報

カテゴリー全体のとらえ方⇒

については当たり前の事でしょう。昨年の同時期にはどのような商品が良く動き、目標、予算が達成できたのか、または何が悪くて未達成に終わったのか必ず記録に残しているので、同じ間違いを繰り返さない、成功事例を拡張するなどの計画のベースとなる動きを捉えるのです。このとき使うのがPOSデータと販促の仕掛けとその実績です。

===POSデータといっても、その用途はデータの加工方法によってさまざまです。このステップで必要となるのは、部門カテゴリーレベルのPOSデータと、実績に影響を与えた主力商品をピックアップする事です。===

についても同じように昨年と比較して、お客様の関心事がどのように変化してきているかを捉えるために直近の商品動向、カテゴリーの傾向をつかみます。そして去年と違う新しい仕掛けに気付かなくてはなりません。去年と同じ事をやっていては、売上の拡大は望めないという事です。
また市場全体の動きと比較して、我がカテゴリーは同じように動いているのか、市場の動きを下回っているのか、という自社の取り組みと成果の状況も考慮します。
これはカテゴリー全体に対しても分析をしますが、カテゴリー内のサブカテゴリーごとにも傾向値をつかむ必要があります。なぜかというと、後続のステップで品揃えを構成するSKUを決める際に、どのサブカテゴリーを強化、拡大傾向に持っていくべきか、また売場でのスペース配分をどのように再構築するかを決定するためには、サブカテゴリー単位での分析と意思決定が必要となるからです。

で大切な事、それは常に市場全体と自社(その小売業)のカテゴリーの業績を比較して、世の中と比べて今、自分たちはどの位置にいるのか、そして何をすべきなのか(改善アクションの方向)が見えてこなくてはならないという事です。

===この時点ではSKUレベルのPOS分析は必要ないと思います。全体の流れ、方向性、自分たちが立っている位置を確認する事が目的であって構わないと思います。===

Where we are?
(今どこ?)
# What we should do?
What we are missing?
(何をすべきか?何が足りなかったか?)

ただこのとき課題になる事として、市場データは非常に高価なものなので、基本的には自社の関連するカテゴリー以外を会社として購入していない場合が多いの で、他のカテゴリーと比較して我がカテゴリーはどのような位置付けにあるのかという、相対比較はなかなか出来ないかもしれないということです。そんなとき は、ここのMDONさんのように、複数分野のメーカーさんとお付き合いのあるコンサルさんとかのお力をお借りしましょう。

についてはやはり小売業はモノづくりが専業ではありませんから、各メーカーさんがどのような機能、味、形態、カラーの商品を新製品として送り出そうとしているか、多数のメーカーさんから情報収集し、全体の傾向値をつかみ、お客様の需要にいかに的確に対応すべきかを検討するのです。ここでは商品の傾向のみならず、TVCMやその投下量なども考慮し、お客様の認知度がどの程度浸透しているかも重要な判断の指標となります。

これらは品揃えを決める前段階に、一般的にバイヤーが行う準備作業の一環です。この他にも競合他社の情報や、他業態、異業種で同種の商品を扱う企業の動向をチェックするバイヤーもいます。
例えば、スーパーマーケットで飲料や菓子を担当しているバイヤーならば、ドラッグストアや酒の量販店の動きも気にしなくてはなりません。またさらに深く考えるなら、ファーストフードチェーンでどのような商品を前面に出してくるかもチェックを入れないと、よく似た食シーンで競合する立場にあるので、ある意味競合するといえるからです。

★ 結果として、ステップ1の段階で皆様にお力を発揮していただきたいのは、市場全体の傾向、市場データの分析、カテゴリーを取り巻く環境の変化、などをバイヤーにインプットしてあげる事です。

===余談(と私見)になりますが、小売業のバイヤーって悲しいかな、実は情報量は乏しいです。いくらPOSデータを握っていても、所詮それは自社のみのデータであり、店舗から吸い上げられる情報も出店している限られた地域だけの情報です。(よほどマメに全国的に情報収集しているバイヤーは別ですが)
一言で言えば限られた範囲のデータと情報しか手元にないのです。
自社が出店していない地域の小売業の成功事例、異業態、規模の違う店舗の情報をカスタマイズして自社で実験してみるという取り組みは出来そうで出来ないのです。業界紙や雑誌に載った時点でそれはオープンな情報となりますから、新基軸の取り組みとはなりえません。 ですから、あらゆるチャネル、地域でビジネスをしているメーカーさんの情報は大変貴重な情報と言えるのです。===

少々長くなりました。今回はここまでとして、次回はステップ2についてお話させていただきます。 ではまた。

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