トレンド
vol.183『お正月だけじゃない、“もち米”の知られざる変化』
― 週次データから見えてきた私たちの生活と価値観 ―
年末になると、筆者の家ではちょっとした風物詩のように親戚が集まります。祖母の家の庭に臼と杵を出し、家族総出で餅つきをするのです。蒸したもち米の湯気に包まれた台所。杵が臼に落ちる音。つきたてのお餅が手に張りつく感覚。子どもの頃から毎年のように体験してきたその光景は、思い出として強く焼きついています。
そんな背景もあって、筆者にとって「もち米」とは、どこか特別な響きを持つ食材です。お店に並ぶもち米を見ると、なんとなく年末のにぎわいを連想したり、家族行事の温かさを思い出したりします。しかし、そんなもち米も、実はここ数年でその売れ方や価格が少しずつ変化してきています。データを見てみると、その変化は思いのほかはっきりと“生活の変化”を映し出しているのです。
ここでは、RDSスーパー全国のもち米の週次データ――「売上金額」と「平均売価」――をもとに、もち米を取り巻く状況の変化を見ていきたいと思います。
※もち米…JICFS分類「米」より商品名称に「うるち米」・「もち米」つくものを抽出。
■年末のピークは健在。ただし「普段の週」が変わってきた
まず注目したいのが、売上金額の推移です。
【図1】もち米の売上推移
(RDS06スーパー全国:2020年1月6日週~2026年1月5日週 100店舗当たり金額から作成)
【図1】グラフを見れば、誰の目にも明らかなのが、年末に向けた売上の急上昇。これは毎年ほぼ同じタイミングで起こり、まさに“季節の山”と呼べるような存在感があります。お正月前にもち米を購入するという習慣が、今も変わらず強く残っていることがうかがえます。
しかし、年末以外の週に目を向けてみると、もっと興味深い流れが見えてきます。
2020年から2023年ごろまで、平常週の売上金額は比較的落ち着いた水準で推移していました。ところが2024年以降、通常週の売上がほんの少し高くなっているのです。
【図2】もち米の金額推移_24年~25年実績
(RDS06スーパー全国:2024年1月1日週~2026年1月05日週 100店舗当たり金額から作成)
劇的な変化ではありませんが、「普段は売れない季節商品」というもち米のイメージが、わずかに揺らいでいると言えるかもしれません。
実は、こうした“わずかな変化”は、日常の食卓や家庭の過ごし方が変わっているサインでもあります。赤飯を炊いてみたり、手作りのおはぎや和菓子に挑戦したり、餅を使った料理を週末に楽しむ家庭が増えているのかもしれません。SNSでも「もち米を使った簡単レシピ」や「炊飯器おこわ」が一定の人気を集めており、こうした新しい調理スタイルが売上の底上げにつながっている可能性があります。
■平均売価の上昇はより顕著。もち米は“高くても買われる商品”へ?
続いて、平均売価の推移を見ると、こちらは売上以上に大きな変化が起きています。
【図3】もち米の平均売価推移
(RDS06スーパー全国:2019年12月30日週~2026年1月05日週 100店舗当たり平均売価から作成)
2023年頃までは、週次で多少の上下はあるものの、全体としては550~600円台の範囲に収まっていました。しかし2024年後半からは、はっきりとした上昇局面に入ります。
直近のデータでは、平均売価が過去の水準を大きく超える週も見られ、もち米が“高値安定”の局面に入っていることがわかります。原料米の価格上昇、物流費や包装材の高騰など、食品全般に影響を与えているコスト増の波がもち米にもおよんでいると考えられます。
ところが、ここで注目すべきなのが、平均売価が上がっても売上金額のピークは崩れていないという点です。価格が上がったからといって、「正月だから買う」という行動が揺らがない。もち米は、価格だけで判断される商品ではなく、季節行事や家族の思い出と結びついた“文化的な食材”であることが分かります。
これは、筆者自身も祖母の家で餅つきをしてきた経験から、なんとなく実感できます。「餅つきがあるから、もち米を買う」という決まりごとのような感覚が、多くの家庭にもまだ残っているのでしょう。
■売上は「量」より「価格」に依存する構造へ
売上金額の変化をよく見ると、ここ数年で“売れ方の構造”が少し変わってきています。以前は、売上金額の大小は、ほとんど「売れた量」に依存していました。年末に需要が集中し、たくさん売れたから売上の山ができる――非常にシンプルな構図です。
ところが最近では、この山が「価格によって押し上げられている」側面が強まっています。つまり、売上金額の増加が必ずしも「量の増加」を意味しないケースが増えているのです。
【図4】もち米のピーク12月~1月1週目を除いた1週当たりの平均金額(棒グラフ)と平均売価(折れ線グラフ)
(RDS06スーパー全国:各年1月2週目~11月4週目(ピーク時を除く期間)での 100店舗当たり平均金額・平均売価から作成)
ピーク時期以外では20年から23年にかけて年々売上が下がっていたもち米ですが、24年、25年は平均売価が上がっても、20年頃まで売上が見込めるため、これは、企業側から見れば、価格戦略の重要性が増しているという意味でもありますし、消費者側から見れば、“もち米は高くても仕方ない”という意識が広がっているとも解釈できます。
■これからのもち米はどうなる? データが語る未来のヒント
では、今後もち米はどのような商品になっていくのでしょうか。
一つの可能性は、「季節×高付加価値商品」としての位置づけがさらに強まり、価格主導で売上が形成される構造が続くというシナリオです。年末の需要は安定しているため、ここに合わせた高品質・限定商品などの展開が進むかもしれません。
逆に、価格が一定ラインを超えたときに消費者がどのように反応するか、これも重要なポイントです。売上金額が維持されるのか、あるいは量の減少が起きるのか。これによって市場のバランスや、企業が取るべき価格設定も変わってくるでしょう。
もち米は、単なる伝統食材のように見えて、実は私たちの生活文化の変化を映し出す“鏡”のような存在です。週ごとの細かな数字を眺めるだけで、その裏側にある暮らしの変化や価値観の揺れが見えてくる、そんな魅力を持った食材なのだと、改めて感じます。
最後に、家計調査の穀物-その他穀物-もちの分類では、同様の動きをしており、RDS全国スーパーでもち類(個包装もちなどの分類)も観てみましたが、もち米ほど大きな変化は見えてきませんでしたが、同様に推移しているような動きでした。
なお、もち米とは別件になりますが、弊社ホームページでお米(5㎏)の店頭売価平均/平均売価がリアルタイムで見ることができますので、ぜひお米の今後の変化もぜひご覧いただくと、生活文化の変化に結び付くかもしれません。
(株式会社マーチャンダイジング・オン ホームページ:https://www.mdingon.com/よりRDSリアルタイムお米(5kg)店頭売価平均/平均売価の「詳しくはこちら」から推移グラフ付きの情報がご覧いただけます。)
お問い合わせ
-
- ご購入前のお問い合わせ :
- 03-6908-7878
-
- 保守契約に基づくお問い合わせ:
- 03-6908-7817
受付時間 9:00-18:00
(土日祝日・年末年始・当社休日を除く)


