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vol.173『値上げの影響によるプライベートブランドの浸透について』
原材料の高騰に伴い、2021年を皮切りにこの数年メーカー各社の製品値上げが顕著となっています。複数回に渡る商品の値上げも珍しいことではなく、2024年のRDSスーパー全国での平均売価は2021年と比較すると24円アップの225円となっており1割以上も売価が高くなっています。
特に加工食品の平均売価は2024年には274円となっており、2021年と比較すると2割近くも売価の上昇がみられます。
【2021年~2024年部門別平均売価推移(RDS-POSスーパー全国)】
RDSスーパー全国の全部門の直近1年間(2024年3月~2025年2月)の実績は、値上げの影響もあり売上金額は102.4%と伸びていますが、売上数量は99.4%と前年を割っております。売上数量に関しては「惣菜」を除いて全部門前年割れという結果となっています。
【食品部門別売上状況(RDSスーパー全国100店当り)】
売上金額が伸びていて売上数量が落ちているということなので、消費者としては価格上昇対策として、必要最小限の買い物に絞って買い上げ点数を減らし、出費を抑えているのではないかと推測できます。
当然、より安い商品を求める傾向も高まっていると考えられ、生鮮・惣菜を除く直近1年のスーパーのプライベートブランド(PB)とナショナルブランド(NB)の比較ではPBが数量前年比102%、金額前年比107.5%とNBを大きく上回る数字となっており、値段の高いNB商品からPB商品にシフトしている様子がうかがえます。
【部門別PB/NB売上比較】
加工度が低く差別化が図りにくい「水」カテゴリーでの売上状況を見てみると、PBを集約した数字はサントリー、日本コカ・コーラに次ぐ3番手となっており、伸び率も前年比125.2%と上位NBメーカーを大きく上回る伸び率となっています。
また、PBよりも平均売価が低いライフドリンクカンパニーの伸び率は145.9%と大きく伸長してきており、PB同様価格の安い商品に消費者がシフトしてきている感があります。
【「水」カテゴリーメーカー別売上比較】
それでは、加工度が高くブランド力や嗜好性が高いカテゴリーではどのような状況になっているのでしょうか。
カレー類(ルウカレー、ルウシチュー、レトルトカレー、レトルトシチュー)での直近1年間のPB売上を見てみると、やはり平均売価の低いPB商品の伸び率が前年比112.2%ともっとも高く、売上の構成比もハウス食品、ヱスビー食品に次ぐ3位となっています。
【「カレー類」カテゴリーメーカー別売上比較】
下記のグラフは2017年から2024年までのRDSスーパー全国のカレー類のメーカー別売上推移を表したものです。ちょうど2021年~2022年の食品値上げが始まったあたりからPBの比率が高まってきており、この時期にPB商品が大塚食品や江崎グリコといったNBメーカーのシェアを逆転しています。
【「カレー類」メーカー別売上構成推移】
食品の価格上昇に伴いより売価の安いPBという理由で消費者が流れてきていると思いますが、近年のPBの品質アップも関係していると思います。
カレー類のように加工度が高くブランドや嗜好性の高いカテゴリーにおいて、ここ数年のPBの浸透度を考えると、消費者がPBの「価格+品質」に気づき始めているのかもしれません。
アメリカでは食品のPB比率が20%を超えているそうです。ヨーロッパではPB比率が5割を超える国もあると聞いています。日本でも食品の価格上昇を受けて、本格的にPB比率が高まってくるのではないかと思われます。
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