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vol.184『『ご褒美にチョコ』が変わる? 価格高騰で伸びるプレミアムアイス』
最近、チョコレート売場で「前より高くなった」と感じることはないでしょうか。
ちょっとしたご褒美にチョコレート菓子を買おうとして、思わず手が止まってしまった――そんな経験をした人も少なくないはずです。
近年、チョコレート市場は、いわゆる「カカオ・ショック」とも呼ばれる大きな環境変化に直面しています。背景には、原材料であるカカオ豆の価格高騰に加え、ロシア・ウクライナ情勢によるエネルギーコストの上昇、さらに円安の影響があります。こうした要因が重なり、メーカー各社は相次ぐ価格改定を余儀なくされてきました。
実際に弊社のRDS市場データで確認すると、2021年1月に180円だったチョコレートの平均売価は、2025年12月には267円まで上昇しています。わずか5年足らずで約1.5倍です。(【図1】参照。)
この急激な価格上昇は、単に「値上がりした」というだけではありません。消費者の“自分へのご褒美”の選び方そのものに、変化をもたらし始めているように見えます。
【図1】MD分類「チョコレート」平均売価の推移
(RDS06スーパー全国:2021年1月~2025年12月(月次)平均売価、各企業のHPより作成)
価格の上昇は、販売数量の変化にもはっきり表れています。
チョコレートの売上数量は、2025年には2021年比で75%まで低下しており、4年間で25%以上減少しています。(【図2】参照。)
注目したいのは、その影響が単に安価な商品だけでなく、「ちょっと贅沢なチョコレート」にも及んでいる点です。
【図3】を見ると、「自分へのご褒美」や「健康習慣」といった文脈で支持されてきた高価格帯・高機能性チョコレートの価格も大きく上昇しています。
これまでなら、少し疲れた日に手軽に買えた“ちょっと良いチョコ”。
その存在が、いまや以前ほど気軽なものではなくなってきている。そんな売場の変化が、数字からもうかがえます。
【図2】MD分類「チョコレート」売上数量の推移
(RDS06スーパー全国:2021年1月~2025年12月(月次)での100店舗当たりの売上数量より作成)
【【図3】MD分類「チョコレート」2021年と2026年の平均売価(右:2026年、左2021年)
(RDS06スーパー全国:2021年1~12月、2026年1~2月(月次)平均売価より作成)
ここで興味深いのが、同じ“甘いご褒美”として比較されやすいアイスクリームとの関係です。
2021年1月時点では、平均売価はチョコレートが180円、アイスクリームが153円でした。もともとアイスクリームのほうがやや安いとはいえ、両者の差は限定的でした。
しかし2025年12月になると、チョコレートは267円まで上昇した一方で、アイスクリームは196円にとどまっています。(【図4】参照)
もちろん、アイスクリームも値上がりしています。
ただ、それ以上にチョコレートの上昇幅が大きいため、消費者の感覚としては「チョコレートは高くなった」「それに比べるとアイスのほうがまだ手が届く」と映りやすくなっています。
つまり、“ご褒美スイーツ”として見たとき、チョコレートよりもアイスクリームのほうが相対的にお得に感じられる状況が生まれているのです。
【図4】MD分類「チョコレート」と「アイスクリーム」の平均売価の推移
(RDS06スーパー全国:2021年1月~2025年12月(月次)平均売価より作成)
■平均売価
『チョコレート』 2021年:180円/2026年:267円
『アイスクリーム』2021年:153円/2026年:196円
こうした変化の中で、存在感を高めているのがプレミアムアイスです。
2023年以降、値上がりの影響が顕在化する中で、MD分類「プレミアムタイプ」の売上数量は前年比で継続的に増加しています。直近の2026年1~2月においても、その増加傾向は維持されています(【図5】参照)。
さらに、プレミアムアイスの中でも「チョコフレーバー*¹」の構成比は、売上金額・数量の両面で年々伸びています。【図6】。
ここから考えられるのは、従来チョコレートが担っていた“ちょっと贅沢な甘いご褒美”の役割を、プレミアムアイスが一部引き受け始めている可能性です。
しかも、ただアイスに流れているのではなく、「チョコ味のプレミアムアイス」が選ばれている点が示唆的です。
消費者は、単純にチョコレートを諦めているのではなく、“チョコ系の満足感”を別の形で満たそうとしている。そう読むこともできそうです。
【図5】MD分類「プレミアムタイプ」と「チョコレート」の売上数量の比率年間推移
(RDS06スーパー全国:2023年~2026年(月次)売上数量より作成)
【図6】MD分類「プレミアムタイプ」のチョコフレーバー*¹売上金額・数量
(RDS06スーパー全国:2021年1月~2025年12月(月次)での100店舗当たりの売上金額・数量より作成)
かつては、数百円で気軽に楽しめた『少し上質なチョコレート』。
しかし今、その価格は着実に上がり、「ちょっとしたご褒美」としては選びにくい存在になりつつあります。
一方で、200円台*²で高い満足感を得やすいプレミアムアイスは、“ご褒美としての納得感”という面で、チョコレートの代替先として魅力を増していると考えられます。
「チョコが食べたい」という欲求を、そのまま値上がりしたチョコレートで満たすのではなく、チョコ味のプレミアムアイスで置き換える。
そこには、単なる節約ではなく、「限られた予算の中で、より高い満足を得たい」という生活者の合理的な選択が見えてきます。
こうした動きは、カテゴリー単体では見えにくく、カテゴリーをまたいで捉えることで初めて見えてくる消費変化の一例です。
弊社RDSでは、このように生活者の購買行動を幅広いカテゴリー横断で分析することが可能です。
いま起きている変化をデータから捉えることは、新たな商品開発や販売戦略、提案活動のヒントにつながるのではないでしょうか。
※本記事における「チョコレート」「アイスクリーム」「プレミアムタイプ」は、いずれもMD分類カテゴリーを指します。
*¹チョコフレーバーとは商品名に「チョコ」「ショコラ」「カカオ」「ガナッシュ」が含まれる商品をまとめた属性。ただし、苺フレーバーと抹茶フレーバーと対でこれらの単語を含む場合は含まない。
*²MD分類「プレミアムタイプ」のRDS06スーパー全国:2025年1~12月(月次)平均売価「291円」
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