vol.141 『RDS市場データで値上げの影響をみる』

あらゆるカテゴリで価格改定が続いています。原材料価格や燃料価格、人件費が値上がり、更に円安という様々な要因により値上げは避けられない状況となっています。
総務省が毎月発表している消費者物価指数をみるとこの1年徐々に物価は上昇し、生鮮食品を除く食料の2022年7月前年同月比は3.7％上昇となっています。

■総務省　2020年基準消費者物価指数 全国 前年同月比

今回は6月出荷分から価格改定が行われたインスタント袋麺、カップ麺に注目し、RDS市場データから生活者の反応を推測します。

このカテゴリの主要メーカーは6月1日出荷分からの価格改定を発表しています。≪五十音順≫
エースコック、サンヨー食品、テーブルマーク、東洋水産、日清食品、ハウス食品、明星食品。

【価格改定直後に売上金額は大きく落ち込む】
売上金額を時系列でみると、インスタント袋麺、カップ麺ともに6月は大きく落ち込み合計の前年比は89％となりました。しかし7月は前年比97％と、価格改定前5月の前年比と同等の数値になっています。
このカテゴリの価格改定情報は事前にメディアでも多く報道されましたが、実績をみると5月に山はなく前年比も97％なので買い溜め需要はなかったと推測します。

■RDS06スーパー 全国 　100店舗あたり金額　

【カップ麺の平均売価は8.0％上昇】
カップ麺のカテゴリ平均売価は8.0％（5月対比7月）上がりましたが、インスタント袋麺の平均売価には顕著な上昇は見られません。
インスタント袋麺の12月の平均売価が高いのは、年末年始の買い溜めに5食の購買が増えるからと考えられます。

■RDS06スーパー 全国　2021年8月～2022年7月　カテゴリ別平均売価の推移

【インスタント袋麺は 3食タイプ1食タイプが構成比を伸ばし5食が縮小】
前述の通り、インスタント袋麺のカテゴリ平均売価はあまり上がっていません。これは6月の価格改定以降、3食タイプと1食タイプが構成比を伸ばしているためと考えられます。

4月4日には東洋水産から3食タイプの『マルちゃんZUBAAN!』が発売されました。それを機にインスタント袋麺3食タイプは、4月には前月8.5％から15.1％と倍近く構成比を伸ばしました。
余談ではありますが、日清食品の3食タイプ『日清これ絶対うまいやつ』は2020年9月14日に発売されています。
1食タイプも5月に12.2％だった構成比は7月には14.1％と伸びています。

■RDS06スーパー 全国　2021年8月～2022年7月　インスタント袋麺の食数別金額構成比

【5食タイプが最も価格の上昇率が高い】
食数別に7月の平均売価を5月と比較すると、1食と3食は6～7％の上昇率ですが5食は10.6％と最も上昇率が高いです。5食の構成比が小さくなり1食と3食が伸びているのは、この価格の上昇率が大きい要因と思われます。生活者としては５食タイプの『お得度』が減ったということでしょう。

■RDS06スーパー 全国　2021年8月～2022年7月　インスタント袋麺の食数別平均売価

インスタント袋麺で2021年売上No.1だった「サッポロ一番 みそラーメン ５個 ５００ｇ」で実際の売価をみます。定番売価以上に店頭で購入された売価の方が、上昇率が大きくなっています。

≪サッポロ一番 みそラーメン ５個 ５００ｇ≫　  ※RDS平均定番売価は販売データよりMDON独自のロジックで算出したものです。

【インスタント袋麺1食タイプは売価が100円前後商品は前年金額超える】
構成比を伸ばしているインスタント袋麺１食タイプに絞ってランキングすると、価格改定後の売価が100円前後の商品は、金額で前年をクリアしている傾向にあります。

■RDSスーパー06 全国　2022年6月～7月　インスタント袋麺1食タイプのランキング　100店舗あたり金額  ※RDS平均定番売価は販売データよりMDON独自のロジックで算出したものです。

【まとめ】インスタント袋麺、カップ麺
・比較的買い置きされやすいカテゴリであるが、事前の買い溜めはなかったと推測される
・価格改定された月は金額前年比87％と大きく落ち込んだが、翌月には97％になった
・カップ麺の平均売価は8.0％上がった
・インスタント袋麺は5食タイプが縮小し、3食タイプと1食タイプが構成比を伸ばしている
・インスタント袋麺は5食タイプの売価上昇率が最も高い
・インスタント袋麺1食タイプは価格改定後100円前後の商品は金額前年比をクリアする傾向

今後もあらゆるカテゴリで価格改定が発表されています。値上げは避けられないながらも生活者にとって手に取りやすい売価に商品を合わせていくことがより一層求められるといえそうです。