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vol.131 『RDSトレンド 【番外編】  ~PI値について~』

流通業界に携わっておられると、「PI値」という流通用語をこれまで何度となく耳にしてこられたと思いますし、実際に日々ご利用されている方も多いことと存じます。
今回のトレンドレポートでは、PI値とは何なのか、PI値をどういうシーンで活用するのが良いのか、改めて掘り下げてみたいと思います。

PI値とは:
PI値とは、Purchase Indexの略で、レジ通過客1000人当たりの購買指数といわれています。数式に表すと、【PI値=総販売金額(数量)÷総来店客数×1000】で表すことが出来ます。これを、カテゴリー単位や単品単位等様々な単位で計算して利用されています。

1000人当たりに換算(指数化)することで得られるメリットとしては、

『来店客数1000人当たりに換算することで、来店客数の違いや店サイズの違いを取り去り、横並びに比較することができる。比較単位は、企業、店舗、市場と組み合わせ自由。』

ということが上げられると思います。特にPOSデータによる市場データサービスでは、その黎明期より多くのサービスでPI値での分析ができる仕様になっていました。指数化することにより、様々な組み合わせでの比較が容易となるため、便利な存在だったということが言えると思います。当社のRDSサービスでもPI値分析が選択できるようにしています。

PI値の注意事項:
ただし、注意が必要なこととしては、PI値は時系列の変化を表現するにはあまり適していないということです。例えば、同一チェーンの店舗別の前年比を表す時に、PI値による前年比を使う人はあまりないでしょう。競合の新規出店により来店客数が落ち、その結果店舗実績が落ちたということを表すには、PI値(による前年比)は適していないからです。つまり、客数の増減というファクターを排除するのがPI値なので、店舗別の前年比などを表すには適さないのです。

従って、上記のメリットには、以下の注釈を入れる必要があります。

※ただし、PI値は切り取られた「ある一定期間内における比較」にとどめるべきである。

適切なPI値活用例:
下記に適切なPI値活用例を3つほど上げてみます。
(1)企業平均と個店の比較:
10月の牛乳カテゴリー全体のPI数量は全店平均が500個に対して、A店は400個と低かった。品揃えに問題があるかもしれない。
(2)商品採用時の期待値として:
○○牛乳はRDS市場データによると、10月のPI数量が50個だった。当店でも同商品を採用すれば来店客1000人当たり50個程度の売り上げが見込めるかもしれない。
(3)取り組みコンテストの評価基準として:
メーカーと小売業との取り組みで、各店舗を競わせるコンテスト形式にして活性化を促す提案をすることがありますが、結果としての実売実績を評価基準にすると、元々の店舗サイズなどによる不公平が生じてしまうので、条件を合わせるためPI値を評価基準として採用する。

PI値の誤用:
ここで、PI値分析のありがちな誤用の具体例について、実際のRDS市場データを用いてお示ししたいと思います。

結論から書くと、「市場動向を表す際に、PI前年比は使わない方が良い」ということになります。

表1は、コロナ禍で需要が増えた代表的カテゴリー3つ「インスタント袋麺」「スパゲッティ」「生地・皮(ぎょうざ)」の前年比を表しています。
当社のRDS市場データサービスでは、販売実績を「100店舗当り金額・数量」で表しており、下記(1)はその100店舗当り金額による前年比を表します。(2)は前段で説明して来たPI値による前年比です。この(1)と(2)の差を最下段に計算しています。

表1.100店舗当り金額の前年比とPI値前年比、及び客数前年比の時系列推移比較
  エリア:RDS全国(サンプル数:1,247店舗)、期間:2020年1月~2021年10月
trend131_1.png

前年比の推移を一見すると、各カテゴリーともに2020年4月を境に、100店舗当り金額の前年比とPI金額の前年比に大きなギャップが出始めていることが分かると思います。最大で10%以上の差が発生しています。前年比で10%の違いというのは「小さい話」ではありません。なぜこのような差が発生するのでしょうか。

ここでコロナ禍初期、2020年4月下旬の「買い物ルール要請」を思い出していただきたいと思います。
この「買い物ルール要請」では、複数の要請がまとめて出されましたが、メッセージとして強かったものは、『買い物は一人で』、『3日に1回程度』にして、『まとめ買い』しようというものでした。

客数前年比を見ると、2020年1月~3月はその前年と比較しても客数の変化は少なかったようです(1月のマイナスは年末年始の曜日の関係が大きいと思われます)。これが、2020年4月の「買い物ルール」要請以降客数の前年割れが始まり、1年経過しても依然として客数の回復ができていないことが分かります。小売各社のニュースリリースを見ても、客数は前年を割りながら売上実績は前年超えしているケースが多かったのではないでしょうか。

この客数前年割れが始まった2020年4月を境にして、100店舗当り前年比とPI前年比のギャップ幅が大きくなって行きます。

前年比とはもちろん本年と前年の2つの期間の比較です。金額だけの前年比、数量だけの前年比ならばもちろん問題ないですが、PI前年比はここに客数の要素が入ってきます。元々、「市場全体の客数」というものは極端に変動しないことが私たちの常識・前提であったため、筆者自身もPI前年比に疑念を持ったことはありませんでした。でも実際には客数に変動がないことを前提にPI前年比は成立していた(ように見えていた)ということに気づきました。

しかし、コロナ禍を経て日本国内の買い物行動に大きな変化が起こりました。今後客数は戻る動きをするかもしれませんが、戻る過程ではまた客数要素の影響が出ます。もうPI前年比をこれまでのように使い続けることは、市場判断には適さないと判断せざるを得ません。

先ほど、「※ただし、PI値は切り取られた「ある一定期間内における比較」にとどめるべきである。」という注釈を入れさせてもらった意味がお分かりいただけたのではないでしょうか。

RDS市場データでは、今後もPI値での分析選択ができるようにして参りますが、PI値の構成要素について改めてご理解の上活用されますようお願い致します。


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