コラム・レポート
vol.51 ビジョンを明確に
夏本番、でもそろそろ・・・
皆様、お元気ですか? ようやく夏本番といった気温になってきましたが、盛夏商材の準備は大丈夫でしょうか。というよりも本格的な夏が来るのが遅かったので、在庫が少々だぶつき気味のところもあるかもしれません。最終の在庫の処分を含め、夏物の着地が難しいところです。しかし昨年との比較では夏日の到来は遅かったものの、一昨年との比較ではまだまだ商機は残されているようにも見受けられます。皆様のカテゴリー特性に応じて処分のタイミングを見計い、きれいな在庫で秋冬の売り場を立ち上げたいものです。
世の中も、消費税率の改定、中国やユーロの問題があったりで、国内の消費を直撃するような事象がいろいろと見受けられますが、みんなが同じ環境の下仕事をしているので、それが言い訳にならないのが厳しいところです。
秋冬の売場の立ち上げといえば、そろそろ下期の品揃えや棚割の準備に取り掛かる時期ではないでしょうか。品揃えや棚割を考える前には、いろいろと準備が必要です。現状把握と現在の取り組みに対する反省と課題の洗い出し、店舗パターンの見直しなど、いきなり新製品の売り方や商品選定をするのではなく、計画段階での理論的な方針作成を忘れずに行ってください。
店舗パターン作成が急務
計画を立てるにあたって、皆様は中期的なビジョンを作成されましたでしょうか。つまり2年後、3年後にはどのような姿(規模、売上、収益性など)になっていたいか、お絵かきをしたことがあるでしょうか。それがあると、今年の下期は何を、どこまでやらなくてはならないか、わかりやすいと思います。言い換えれば、”Where we are?” がはっきりわかるようになっているかということです。このお絵かきが定性的、定量的に「こうなっていたい」が明確であれば、それと現状を比較して優先順位高・中・低で課題を把握することができるでしょう。複数の課題は、最終目的に向かってお互いに関連し合っているはずなので、課題Aが解決しないとBが終わらない、課題Cを達成するためにはDを克服する必要がある、などといったように、相関関係まで理解しておけば、時間や手数の無駄は大きく省けると思います。
そうした課題の中で、いくつかの大前提の一つでありながら見落とされがちなのが、以前にも申し上げた店舗パターンの作成です。前回も店間格差の問題について話しましたが、これも店舗パターンの精度が低いか、そもそもパターンを考慮せずに計画を組み立てていたかで生じる問題だと思います。
店舗パターンを作るには、店舗にかかわる複数の属性で括り(クラスター)を作って店舗をプロットしていくのが手っ取り早い方法です。例えば商圏人口(1次商圏の人数、年収構成、年齢構成、世帯構成など)、売上規模、売場のサイズ(坪数、㎡数)、競合店の存在、立地(駅前、住宅街、郊外、ロードサイド)など、カテゴリーの商品の消費を左右する主要ファクターを、2次元を使ってクラスタリングすればよいと思います。次に、各クラスタリングごとに必要となる商品の括り(細分類レベルで)と、その品揃え構成比を決め、それぞれに売上目標を設定するという手順で、店舗パターンごとの商品構成、売上利益の構成を大まかな目標値として設定すればよいのです。
一方、商品的には、各細分類ごとにマストの商品から選択商品まで、優先順位を付けて管理するようにしておけば、上記の店舗パターンが決まった段階である程度の品揃えは確定してしまうということになります。しかしここまではあくまで機械的にできることで、強いて言うならば賢い棚割ソフトにお任せできる範囲です。ここで再度、今年、今季の「何を、どうする」に立ち返って、当初に決めた目的・目標が達成できる内容になっているかをチェックし、今日までの反省と課題が解決できる中身になっているかを確認することが重要です。また途中までは機械的にできる業務ですから、そのまま放っておくと他社とは何も差別化されない内容になってしまいますので、いったんアウトプットされたものに魂(目標達成のためのこだわりや戦術)を注入することも忘れずに行ってください。
当初のビジョンやロードマップなくしては、注入すべき魂も注入できず、Plan-Do-SeeのSeeをすることもできず、結果として場当たり的なマーチャンダイジングになってしまう可能性が高まります。基本方針が希薄だと、実績が伴わなくなってきたときに様々な対策をとり、本来目指すべきゴールがぶれてしまうという事態を引き起こします。そうなってしまうと軌道修正をするのに、また時間が必要となるという負のスパイラルに入りこんでしまいます。だからこそ計画が重要であり、計画のバックボーンとなるビジョンが必要不可欠なのです。
勿論、世の中の環境や政治、経済の変化によって計画は見直されるべきものだと思いますが、ビジョンはぶれないものではないでしょうか。「○○○でいついつまでに№1になる」と決めたら、環境変化はそのためのロードマップを書き換えるだけでよいのです。
話があっちこっちに行きましたが、とにかく店舗に合わせた商品、品揃えとトップダウン、ボトムアップで数字の整合性を取るという癖(仕事の習慣)を早急に身につけるべきだと思います。
みなさん、頑張りましょう!
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