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コラム・レポート

vol.46 「仮説」と「判断」がもたらすもの

決算期と棚割りの季節

 皆さん、お元気ですか。さてさて年が明けたと思えば、小売業は決算時期に入り、お取引先様も含めてピリピリする時期になってきましたね。毎年のことではありますが、景気が悪いとなおさらこの時期は嫌なもので、なかなか本業に集中できない日が続くものです。店舗も商品部もスタッフも、それぞれが背負ったミッションを果たすべく期末の追い込みに必死です。
 とはいっても、MDを預かるバイヤーたちは、この時期同時に春夏の品揃え変更、棚割り作成も進めなくてはなりません。目先の数字とこれからの数字を作るための作業を同じタイミングでやっているわけです。それはバイヤーだけでなく、問屋さんメーカーさんも同じことだとは思いますが、なかなか神経を使うしんどい時期です。

棚割り作成、その前に

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 さて、新しい棚割りを作成するにあたって皆さんは何に一番注力されているでしょうか。MDの流れを表現するのに、「PDCAサイクル」あるいは「Plan-Do-See」とか、「仮説・実験・検証」とか「観察・分析・判断」とか、いろいろな言葉を使いますが、私は分析から得られた課題に対する解決策として、どのような仮説を立てるか、または何を判断したかが重要なのではないかと思います。分析することはもちろん大切ですが、分析することで仕事は終わりではありません。最悪なのは、POSデータの数字を整理しただけで分析した気分になってしまうことです。それは単に事実や現象を確認したにすぎません。大切なことは、そこから何を見出したのか、それをどのように改善・解決していくのかアクションプランを立案することが一番ではないかと思います。棚割りは、その見出された仮設や判断を具現化したものになっているべきものだと思います。仮説や判断に強烈な説得力を持たせられるまで知恵を絞ることに時間をかけるべきです。その為に以前にも申し上げましたが、品揃えのマトリックスを作り検証する、商品構成グラフを作成し仮説を裏付けするなどの手法を取り入れるべきだと思います。仮説や判断を文書で残しておけば、後の検証も容易になります。

 プレゼンテーションでいえば、課題とその解決のための仮設、アクションプランに最低でも3~4割は割いても構わないともいます。ここでメーカーとバイヤーが合意できるかどうかで棚割りの提案が受け入れられるか否かが決まるといっても過言ではないでしょう。ついでに言えば、取り巻く環境の共有1割、分析1割、仮説の説明3割、マトリックスと商品構成グラフ2割、棚割り2割、販促施策1割ぐらいの構成ではいかがでしょうか。表やグラフやデータは添付資料として別冊にしても構いません。
 そして今一つ大切なのは、昨年同時期もしくは直近の品揃えや棚割りと比較し、何がどう変わったのかを説明できるようにすることです。また新しく取り入れた考え方が明確にわかるようにすることです。従来の延長線上で新製品と不振商品を入れ替えただけの棚割りでは、売り場が変わった、鮮度が上がったとお客様から評価されないでしょう。
 ビフォー・アフターの表現の仕方は特に決まった方法はありませんが、品種ごとのSKU数の増減、スペース構成比の違い、前回と今回の品揃えをFPチャートで重ねてみるなど、仮説を具現化して明らかになった事象を誰もがわかる表現方法にすればよいと思います。売り場ごと、カテゴリーごとに課題は違いますからそれぞれの特性に合わせて使い分けるべきです。

目的は数字を変化させること

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 そして最後に重要なのは目標値の作成です。課題を発見し仮説を立てた段階で、この仮説に基づき売り場を変えることによって、数字がどのように変わるのか、シミュレーションし目標値を作成することが締めとしてなくてはなりません。
 目標値は解決すべき課題によって変わりますが、単純に売り上げであったり粗利(額、率)であったり、あるいは在庫効率であったり、とにかくどっちにベクトルを合わせているかをはっきりさせる必要があります。よく見受けられる残念な提案は、提案された内容がどれだけ数値改善にインパクトがあるのかわからない提案です。結局その提案を採用するかしないか、その提案に乗っかるか否か判断がつけられないのです。バイヤーをその気にさせるためには改善目標を数字で表現することが重要と考えてください。

 数字を変えるためには売り場をどう変えるか(新しい取り組みや変化を入れる)、売り場を変えるためには品種の構成をどう変えるか(環境を読んで成長と衰退を判断する)、品種の構成を変えるためには棚割りをどう変えるか(限られたスペースの中でパフォーマンスを最大化する)、棚割りを変えるためには品揃えをどう変えるか(マトリックスや商品構成グラフで見直す)、品揃えを変えるためには商品をどう変えるか(新規に入れるべき商品とカットする商品の判断)、何にフォーカスして何をやめるか、その仮説と判断が数字の変化をもたらすと考えてください。

 毎日激務が続きますが、頑張りましょう。

2012年2月 1日 10:30

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