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コラム・レポート

vol.45 コスト構造の改革と業態の分岐

師走に向けて

 皆様、こんにちは。世の中もクリスマスの雰囲気が出てきた今日この頃ですが、お仕事のほうは順調でしょうか。何となく今年の傾向を反映してか、クリスマスも家族や親しい人たちと楽しむというパターンが多いとのことです。もちろん自粛ムードというものがあるのでしょうが、それが引き金となって今までの生活パターンを見直すターニングポイントであるかのようにも感じられます。新しいライフスタイルの始まりのようにも感じられます。我々流通業に携わる者もそのトレンドをよく理解して対処していかなくてはなりません。
 それと今ひとつ考えなくてはならないのは、これからは大量の定年退職される方々が新しい生活に入ってくるということも、消費のトレンドを変える大きな要因であるということです。以前にも何度か触れていますが、シニアへの対応を考えるということです。変化対応、これが流通業にとっての使命です。
 しかし簡単に変化対応といっても、具体的に何をどう変えていったらよいのか、答えを見つけ出すのは知恵とエネルギーを使う作業です。特に商品、品ぞろえ、売り場、販促など、それぞれを環境の変化に合わせて考え直さなくてはならないのですから大変です。商品の入れ替えをしても、それが理にかなった理由で変更されていなくてはダメ、売り場を変えても中身の商品が変わっていなくてはダメ、販促の手法を変えても提供するものが変わっていなければダメ、といった具合に小手先の方法論では数字を変えるのはかなり難しい状況です。
 結局、瞬間的な売り上げ、集客を増やすために安売りに走る小売業が目につきます。でも根本的な問題はそういうことではないのです。

コスト構造の改革と業態の分岐

 業態論という言葉がありますが、そもそも流通先進国であるアメリカでは、ディスカウントとかカテゴリーキラーとかスペシャリティーストアとか、ターゲット顧客を絞り提供価値を変えるとともに、コスト構造、収益構造が業態ごとに違うので、それが価格に反映できる仕組みを構築しているのです。
 ノードストロームのような価値の提供を重視している百貨店では、ディスカウント業態では無駄と思われるサービスやコストを無駄と思っていません。そのため当然コスト構造はディスカウントより格段に高いわけですが、その分サービスはよそにまねのできない価値を提供し、それを心地よく思うお客さんを対象として商売しているのです。
 反対に余計なサービスやきらびやかな店づくりは必要ない、品質もそこそこであれば良いというお客さんはディスカウントショップを選択するわけです。故にディスカウントは徹底したコスト削減をし、それに命を懸けるわけです。
 日本ではどうでしょうか。百貨店、GMS、SM、専門店、ドラッグ、コンビニ、ディスカウントなどいろいろな業態があり、売価の競争は日常茶飯事ですが、コスト競争はあまり前面に出てきません。もちろん努力をされている企業さんはありますが、圧倒的に差をつけているまでには至ってないでしょう。
 しかし最近では、そこに目をつけて一部の小売業は改革を進めています。たとえば物流コストの低減であったり、商品の陳列など売り場のメンテナンスにかかる費用を削減するためにオペレーション改革をしたり、人件費そのものを削減するための仕組みを導入したりしている小売業が現れてきました。それはPB商品の比率を高めて、コスト削減の努力はするものの収益力そのものを高めようとしている小売業とは違う方向性の努力といえるでしょう。

 そこでメーカー、問屋の皆さんも、担当されている小売業がどのような方向に向けて努力しているのかをよく研究する必要があると思います。物流費まで含めとにかく安いコストで店頭まで商品をつけることに専念している企業と、安いに越したことはないけれどそれ以上に価値提供に重きを置いている企業とでは商談の内容も提案する企画も変えるべきです。
buyer0045_1.jpg  できれば提案する商品も変えてほしいところです。日本の多くのメーカーさんには建値制度があり、なかなか小売業への売り渡し価格に差がつけられないのが現状だと思いますが、それではコスト構造の違う小売業それぞれに適合した商品提案はしづらいのではないかと思います。年間の販売量に応じたリベート契約というのは、わかりやすくて便利な仕組みなのですが、物の売り方(価格、販促、提供方法)が変わろうとし、コスト構造の改革に着手を始めた小売業に対しては、リベート契約というのは逆に足かせになる場合があり、これからは必ずしも良い条件での契約が売り上げを保証するとは限らなくなるでしょう。それよりもメーカーさんの費用負担、問屋さんの費用負担はこれとこれ、ここまでという透明性のあるコスト計算が必要とされ、店頭で商品が並んだ時、その店を選択したお客様のニーズに合致した状態で提供することが可能かどうかに焦点が当たってくるのではないかと思います。現時点でのNBメーカーさんではかなり対応が難しいかもしれません。
 Aという商品は日本全国どこへ行っても同じ値段であることが望ましかったのが今まででしたから、故に消耗戦的な売価競争が起きていたわけで、メーカーさんも必要以上の安売りを避けるために少なからず時間とエネルギーを使っていたわけです。
 しかし明らかにコスト構造もターゲット顧客も違う小売業同士では、Aという商品の売価が違っていてもあまり問題にしないでしょう。向こうは販売までのコストを切り詰めているから安く売れて当然だ、そのかわりこっちは価格以上のサービスや店舗そのものに付加価値をつけているので単なる安売りには左右されない。そんな時代がすぐそこまで来ているのではないでしょうか。
 さらには各業態各社がそれぞれの店舗コンセプトに合わせたPBを、相当のボリュームで品ぞろえできてきたら、NBの価格競争は今と全く様相が変わるでしょう。逆に言うと、業態に対応した商品やコストの提案、あるいは価値の提案ができなければPBによって駆逐されてしまうNBもありうるということです。

 消費環境の変化、市場動向、最も大切な消費者そのものの変化、これらに気を配り、変化に対応していく、これは小売業だけの問題ではなさそうです。製・配・販ともに知恵を絞って解決していく問題だと思います。
 皆さん、頑張ってください。

2011年12月 5日 14:30

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