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コラム・レポート

vol.32 変化対応のスピード感

皆さん、こんにちは。お元気ですか。
なんだか一気に寒くなり冬到来の気配ですが、気温の変化への対応は大丈夫ですか。また大変な勢いで円高が進んでいますが、対応のほどはいかがですか。ご存知のように流通業は「変化対応業」ですから、気温の変化や消費環境の変化には敏感に対応することが求められます。消費者であるお客様が求めるもの、少しでも暮らしに役立つ商品、サービスを提供することは小売りだけでなく、流通全体で対応を考えるべきことだと思います。ビジネスである以上利益を重視した考え方というのは何よりも大切ですが、利益とはお客様からの支持があって初めて得られるものですから、お客様の関心事には素早く対応することが重要でしょう。そのスピード感が競争優位を生み出し、また差別性に繋がるものであることを認識すべきだと思います。製造業から小売業までをよく川上、川下と表現しますが、変化対応への柔軟性は川下(小売り)のほうが早く、川上(製造業)ではそのメリットが出しにくい構造となっているようです。普通の商品の流れを逆流するのですから、これもまたメーカーさんと小売業に温度差が生まれる要因となり、営業の方々が一番苦労されていることだと思います。ましてや今GMSやスーパーマーケットではいかに収益力を高めるかということに躍起になっていますから、まさに円高還元のような環境対応型のセールスといえども利益はきっちり取りたいですし、集客の目玉として価格もインパクトのある売価で提供したいところです。こんな時には本当にメーカーの営業の方は大変だろうと(小売りの立場ながら)同情しますが、同時にここは知恵の絞りどころでしょうし、ピンチをプラスに変える発想の転換も必要なのではないでしょうか。

負の連鎖に注意

さて皆様がご担当されている小売業では、どのような取り組みが進んでいますでしょうか。おそらく何も打ち手を考えていない小売業はないと思います。何もしていないということはますます競合に負けていくということになりますから、客数は減少の一途をたどることになります。客数減は負の連鎖の始まりで大変深刻な事態です。
buyer0032_1.gif つまり普通に考えると・・・
客数が減る⇒売上が減る
⇒利益を確保するために値入の高い商品を仕入れる
(これが売価還元法の便利そうでややこしいところ)
⇒同時に追加の販促費を使う、経費のコントロールが始まる
⇒商品部が押し込んだ商品が在庫の増加を引き起こす
(在庫回転が悪化、キャッシュ不足が起こる)
⇒仕入れを減らす
⇒在庫を減らすために値下げが始まる
⇒在庫の原価率がアップする
⇒再び利益対策が必要となる
⇒シビアな商談が始まる。予定外の値引きやリベートの交渉が始まる
といった具合に小売業とメーカー、問屋さんの商談が泥沼化していくのです。
また客数が減っても売上を維持するため、客単価を上げる策をとるバイヤーもいるかもしれません。つまり1点単価、平均単価を上げようとするのですが、これはうっかり対象とする商品を間違えると大変危険です。それよりも販売点数を上げて客単価を維持する方法を考えたほうがよいと思います。
このような負の連鎖が始まると、メーカー、問屋さんにとっても良いことは一つもありません。つまり在庫が増えた後の仕入れを減らさなくてはならない現象は痛手となるでしょう。しかもその後、厳しい商談が待っているのですからたまりませんね。
また担当バイヤーとその上司(マネージャーや部長)とでは、見ている数字が違います。バイヤーはカテゴリーや単品レベルの売上と荒利がどれだけ改善できたかということが数値責任となりますが、マネージャー、部長クラスはトータルで利益や担当範囲の経営的効率数値がコミットしたレベルを達成できたかどうかを見ていますので、バイヤーの上司がバイヤーに求める改善も数字だけで指示が来る場合がほとんどですから、バイヤーも分析し適切な価格交渉をする余裕すらなく、手当たり次第に商談するといった状況に追い込まれるのです。

buyer0032_2.gif こうならないためにも、皆さんもちょっと先回りして、商談中に相手先の小売業では客数の増減がどんな状況であるか情報を集めておいたほうがよいのではないかと思います。そして相手先の客数が恒常的に減少しているのがわかったら、事前に通常よりも多少とも利益率の改善ができる武器(商品)を準備されたほうがよいかと思います。どうせ後から価格交渉されるのであれば、前もって社内で上司に相談してバイヤーから要求が来たらすぐに出せるような仕掛けを準備しておくべきです。バイヤーも価格交渉を1社だけとしているわけではないので、素早く条件提示のあった取引先からは、ありがたくその条件をもらうでしょうが、遅くなればなるほど、より厳しい条件交渉となるでしょう。これもスピード感のある仕事の仕方が必要ということです。

しっかりした関係づくりを

ちょっと先に触れましたが、バイヤーが果たすべき数値責任の第1は、初期段階の利益計画、つまり仕入れの値入率です。この目標を達成するために、また改善するためにバイヤーの仕入商談は存在するのです。しかし未熟なバイヤーは単に原価交渉のみで値入を改善しようとし、取引先様をミスリードすることになります。熟練したバイヤーは仕組みの改善、新しいカテゴリーの創造によって売場の価値を高めて利益率の改善をしようとします。一見手ごわそうに感じるのは前者のほうですが、実は熟練バイヤーのほうが皆様にとっては脅威です。なぜなら仕組みの変更でマーチャンダイジングを考えるバイヤーは、既存の延長線上では仕事をしないからです。つまり皆様が今バイヤーと良好な関係が築けていると思っていても、熟練バイヤーはドライに割り切って、関係を断ち切る勇気と技術をもっているからです。熟練バイヤーが見ているのはあくまでお客様であり、店や売り場がいかに高い支持を得られるかに焦点を当てて仕事をしているからです。とはいっても真にビジネスパートナーとして関係が築けているのであれば、急に取引がなくなることはないでしょうが、中途半端な関係は危険だと思ってください。

色々と大変な時代ですが、知恵を絞りながら頑張りましょう。

2010年11月 4日 10:10

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