コラム・レポートのアイコン

コラム・レポート

vol.30 本部と店頭の温度差

残暑、厳しい中

 皆さん、お元気ですか? 残暑、厳しいですね~ 記録的な暑さが続いていますが、皆様のご商売にはどのように影響していますでしょうか。追い風に影響しているならまだしも、暑さによって体調のみならず業績までもが苦しくなっているようでは目も当てられません。

 さらに追い打ちをかけるように円高が進み、経済の混乱によって悲喜こもごもといった状態でしょうか。また、エコカー減税も間もなく終わり、地デジによるテレビの販売も約1年後には終止符が打たれます。また昨年はインフルエンザ特需といわれるような商品群の売上ボリュームがあり今年はそのカバー対策が見えてこない等、消費経済の中に光が差し込む要素はなかなか見つかりません。

 しかし世の中そんな甘くなく、待っていても何も起こりません。差し込む光がなければ自力で光を見つけて明るくしていくしかありません。あるいはいままで注目していなかった部分に自分で光を照らしてみるなどして、イノベーションを起こすくらいの意気込みで頑張ってみましょう。

本部と店頭の温度差

 私は今年のお盆商戦の期間4日間で自社、競合含めて20店舗余りの店回りをしましたが、やはり現場を自分の目で確認することの重要性を改めて痛感しました。それは普段POSデータを見て、売れている、売れていないを評価していますが、現場を確認すれば、それがなぜPOSに出た結果につながったかを確認できたからです。それと本社本部が考えていることと現場(店頭)との温度差を認識することもできたからです。その温度差を感じることによって新たな課題が見えてきました。

 今、GMSやホームセンターのようなかつて市場を凌駕したビジネスモデルが崩れ始めています。それどころかドラッグストアも新しい成長カテゴリーを模索し、コンビニエンスも色々な挑戦を始めているようです。それは不況や将来への不安感、少子化、高齢化など様々な要素によって消費者の購買行動が明らかに変わったことに対して既存の組織小売業がついていけなくなっていることの象徴だと思います。そして従来の業態DNAをもったバイヤーが仕入活動を行う組織小売業の本部と、異業種・異業態であろうと、規模の大小も関係なく、隣の小売業と戦っている店舗との間に自ずと温度差が生じてしまうのです。
 店舗は一人でも多くのお客さんを獲得し、一つでも多く商品を販売し売上を伸ばそうと努力しているわけですが、本社本部は売上が伸びない中で利益を獲得するため値入率に執着した商品計画を立てざるを得ない状況になっている、こういったところにも温度差が生じる原因はあるのです。

buyer0030_1.jpg  あるいは店舗は少ない人時で売上をとろうと努力しているわけですが、本部は売りと利益を両立させるために必要以上の商品を手間のかかる陳列や提供方法で計画の提案をしてくる、在庫や投入数量についての要件も店舗と本部とでは違う、こういうギャップも実際に起こっているのです。組織小売業として、計画立案部署と実行現場とが連動していなかったら、組織として機能しませんし致命傷です。こうなりかけている小売業が散見されるのではないでしょうか。

人時生産性

 以前、小売業の生産性を見る指標の一つとして坪当たり売上、坪当たり荒利があると記したことがありますが、店頭ではこれらと同様に重要視されるのが人時売上、人時生産性です。つまり従業員の労働時間1時間当たりで売上いくら、荒利いくら稼いだかをみる指標です。小売りによっては労働生産性、労働分配率で代替しているところもあるかもしれません。
 店長には店舗のPL管理する責任がありますから、経費の中でも大きなウェイトを占める人件費=従業員の効率性を重視するわけです。しかし商品部では人時生産性の改善を最優先課題として品揃えや販促計画、棚割などを考える場面はあまり見受けられません。よって商談でバイヤーから人時生産性の話があまり出てこないので、メーカー、問屋の皆様も人時生産性を意識した提案に知恵を絞ったことはあまりないと思います。
 しかし商品部と店舗との間で温度差が生じている、生じかけている小売業では、いくらバイヤーに好まれる提案をもっていったところで、店頭での実現率はおそらく下がるでしょう。それではメーカー、問屋としても困った事態になるはずです。やはり消費者の購買の現場である店頭に商品が積まれていなければ意味がありません。
 ですから今とるべき手段としては、店頭での状況をよくヒアリングして、現場の課題を理解し、それを反映した提案をもちこむことが一番説得力のある提案になるのではないでしょうか。今回例に出した人時生産性は結構㊙度の高い数値ですから、すぐに教えてもらえることは少ないかもしれませんが、担当売場の生産性が他の売り場と比較してどうなのか、昨年と比較して下がっているのか上がったのかなどは教えてもらえるのではないでしょうか。特定店舗の事例にならないように、複数の店舗でヒアリングしてみることがポイントです。競合環境によって上下する場合も多いからです。  それを踏まえ、ヒアリングした内容を加味した企画を、店舗が喜んで実施する計画として提案すれば、バイヤーに対して強い説得材料となるでしょう。

buyer0030_2.jpg  市場動向全体を理解しトレンドの商品を販売計画に盛り込むということがバイヤーの責任にほかなりませんが、店頭で起きている問題を理解しているのは店舗で頑張っているメンバーです。店舗がありがたいと思う企画が今必要とされているのです。
 それは先々、配送されてからすぐに陳列可能なフロア・レディ・マーチャンダイズやシェルフ・レディ・パッケージングに繋がり、単品、複数アイテムにとどまらず、一つの大きな塊となれば、店舗の生産性は飛躍的に改善され、小売業もメーカーさんも問屋さんもまた少しは元気を取り戻すことになるでしょう。
 しかし本質的には、GMSをはじめとした今まで元気だった業態やショッピングセンターそのものをどのように発展的に破壊していくかが重要課題ではあるのですが・・・。

 提案の視点を変えてみるつもりで現場を回ってみてはいかがでしょうか。
 ご健闘お祈りしています。

2010年8月30日 11:01

お問い合わせ

    • ご購入前のお問い合わせ   :
    • 03-6908-7878
    • 保守契約に基づくお問い合わせ:
    • 03-6908-7817

受付時間 9:00-18:00
(土日祝日・年末年始・当社休日を除く)

ページトップへ