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vol.28 サムライジャパンの戦い方

 皆さん、お元気ですか。 ワールドカップ、盛り上がっていますか? サムライジャパンは、戦前の予想を覆し大活躍で予選突破です。これは個人的に考えると、外国人選手と比べて、体格、運動能力が個々人では劣る日本チームをチーム力で能力を引き出し、直前に選手の調子を見てワントップの戦術に切り替えた岡田監督の見事な采配に負うところが大きいのではないかと思います。監督の戦略戦術の組み立て方が大きく勝敗を左右するという良い例だと勝手に評価をしています。

ちょっと無理やりですが、サムライジャパンのように、機を見るに敏、自分の実力を知り相手を攻略するための戦略戦術を組み立てるということは、商売にもつながるような気がします。つまり相手先企業の悩み解決となる方策を、自分の手持ち材料の使い方を工夫して、時流に合った提案をすることによって、突破口を開くことが可能ではないかということです。冗談っぽい話かもしれませんが、こんな時代なので、とりあえずトライしてみる場面があってもいいのではないでしょうか。

大切なのは『率』です

 まず、企画や提案が通らない、または以前より数量・金額がまとまらず前年の数字がクリアできないなど、相手が大手組織小売業であろうと、以前の商談とは様相が違うことは痛感されているかと思います。小売業側も、以前ほど全体的に販売数量が伸びず、ムリな数量提案が店舗にできない状況に悩んでいます。その結果数量を伸ばすために、ムリした価格競争を挑み、結果的に客単価、荒利を低下させ、負のスパイラルに陥っているのが現状だと思います。

そこで小売業の利益は売価還元法によって確定されるということを今一度ふり返ってほしいのです。つまりバイヤーは常に値入率、荒利率の改善が使命となっていることを思い出してください。

 簡単に言うと、小売業は多品目を多頻度で販売するため、単品ごとの利益を確定させることが難しく、棚卸時の大分類あるいは中分類ごとの売価総合計に総仕入の原価率を掛けて利益を確定する方法をとっているということです。例えばAという商品は、ある一定期間中に特売の原価売価でも仕入れ、定番でも仕入れていたとしたら、棚卸時点で目の前にあるAの在庫の正確な原価売価はわかりませんので、大分類、中分類単位で仕入れの原価率を棚卸の売価合計に掛けて利益を算出しているのです。故にバイヤーは売上予算の達成が見込めないときには、せめて利益率だけでも上乗せしておかないと、数値管理上、利益が全く出ないという状況になるのです。

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 だから期末になると値入率の高い商品を集めたがるというのはその為です。言い方を変えれば、売上予算が達成されても、値入率、荒利率が低ければ、利益は確保できないという、バイヤーにとって最悪の事態が起こる可能性もあるということです。これは売上が右肩上がりのときにはまだ許されるでしょうが、売上の維持が精いっぱいの状況では、せめて利益率だけでも確保しておかないと、バイヤーはいったい何を商談しているのかという評価になります。端的にいえば、値入率、荒利率の確保こそ、バイヤーが必死になる数値なのです。またその為のPB開発でもあり、原価交渉でもあるのです。

相乗積での優先順位

 しかも、ただやみくもに値入の改善をするわけでもなく、当然担当品種の全体数値に対して影響が見込める商品、企画を優先的に値入改善するのです。その優先順位の付け方は相乗積です。相乗積とは、売上構成比×値入率(または荒利率)で算出される数値で、この数値で商品や企画の、全体への影響度合いを測り、どの商品どの企画の値入を改善することが全体の数値改善に寄与するかを分析します。簡単にみると以下のように相乗積をもって商品の重要度を決めるわけです。

buyer0028_2.jpg  例えば商品5は重要度2位ですが、仮に値入率を24.0%に改善したら重要度は1位に上がるのです。また商品4も値入が26.0%になれば、重要度のランクは上がります。つまり売上の伸びが大きくは期待できない状況では、バイヤーは重要度の高い商品をたくさん売ることによって全体の数値コントロールが可能になるというわけです。

 ですから皆様の商談も、「売価をここまで下げてよいから少しでもたくさん仕入れてください」という商談ではなく、売価はともかく「値入率がこれだけとれるように提案を見直してきた」という企画、商談に方針を変えていくべきではないかと思います。また単品での条件改訂が難しい場合もあるでしょうから、その場合には”荒利ミックス”の手法をとります。つまり値入の低い商品を提案すると同時に、値入の高い関連商材を一緒に提案し、企画そのものの値入低下を抑制して、結果として「エンド1本でこの値入」というような提案をするのです。ただし値入が高いだけで売れ数が全く見込めないような商品ではダメです。仕入段階の値入は向上しても、最終的に在庫が残り、値下げ処分が発生して荒利は下がってしまったということでは本末転倒だからです。

 勿論御社の内部事情もあり、なかなか条件を出しにくい場合もあるでしょうが、今回の内容でバイヤーが「率」を重要視することが少しご理解いただければと思います。

 サムライジャパン同様、現状を突破し本番に強い商談を目指しましょう。

2010年6月30日 16:01

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