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コラム・レポート

vol.27 変化をよく見て

 皆さん、お元気ですか。 相変わらず明るいニュースの少ない今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。
 4月の全国スーパーの売上は、前年対比で4.9%の減となり、17か月連続前年割れという結果でした。そうかと思えば、東京の銀座に象徴されるように、流通の主役入れ替わりが目立つようになってきました。
 しかし、小売りの主役が変わるのと同じように、売れ筋商品、注目カテゴリーも激しく変化しています。新しいカテゴリーも生まれつつあります。しっかりアンテナを張って、調査研究を怠らなければ、必ずどこかにチャンスは転がっていると思います。大切なことは、視野を狭めず、世の中の変化や潮流を感じて、自分のビジネスにどのように生かせるかを考えることではないでしょうか。

PBの変化

 売れ筋の変化といえば、以前から兆候はありましたが、小売りのPBに変化がはっきり表れてきたようです。あちこちの大手小売業でPBの品目数、商品構成の見直しが発表されています。皆さんはこの動向をどのようにとらえるのでしょうか。
 小売業が今直面している課題といえば、収益力強化のはずです。つまり荒利益率、営業利益率を高めることです。利益率を高めるために必要なことは、仕入れの値入率を改善すること、人件費に代表される販管費を低減することですが、その値入率改善の武器として使われていたPBの品目数を削減するということは、収益力強化にも大きく影響を与えることになります。

 では何故PBを絞り込むのでしょうか。それには幾つかの要因が考えられますが、もっとも大きいのは、価格競争力が低下してしまったということです。
 ここ数年でPBの台頭が激しく、販売数量を落としてきたトップNBが、最近のデフレも影響し、再び価格競争力をつけてきたということです。調味料の某NBの直近3カ月の市場POSを検証すると、平均単価がその小売業のPBよりも低くなっていたということです。もともとブランド認知の高いNBがPBよりも安ければ、当然消費者はそちらに流れるでしょう。

 そうなるとPBには何が起こるか。PBはお分かりの通り、年間の生産数量も必要となる包材もすべて小売業で引き取ることが契約で義務づけられています。またPBを開発着手する段階では、前年のみならず数年間の対象NBの販売実績を参考に契約数量を算出し、勿論企業としての成長性も加味した数量で委託先に発注するのが普通です。それがNBの復調により、当初予定した数量が消化できなくなれば、製品在庫もさることながら仕掛かり在庫の消化もきつくなってきます。しかも引き取り期限付きです。これが数百、数千のSKUで起こり始めたら、PBは本来の財務的な機能を失うどころか、利益の足を引っ張るようになります。まずその現状を打破するためには、品目の見直し、改廃が必要になるということです。通常の棚割で行われていることと同じです。

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 問題はそこから先の行動です。皆様が担当しているカテゴリーのPBがカットと判断されたら、それこそ大きなチャンス到来ですが、すぐさまシェアを拡大するためのプレゼン、商談の準備に取り掛からなくてはなりません。担当小売業からPOSデータを見せてもらっているのなら、対象PBの動きを今一度良く検証してみましょう。
 ではカットではなくリニューアルだった場合はどうでしょうか。この場合は手ごわいことになります。当然ターゲットとしているNBを凌駕するような価格と規格で商品を見直すでしょうし、継続と決めた以上は徹底して拡販を企てることは間違いありません。
 しかし、だからといって諦めてはいけません。そのPBとNBのポジショニングをしっかり分析して、住み分けのポイントを見出しましょう。

 PBが売れなくなった理由の一つには、PBの比率拡大によりお客様にとって選択肢の少ない=選ぶ楽しさのない売場が広がった、ということもあります。つまりPBとNBを比較購買できる売場こそお客さまに支持される売場なのです。ですからPBとNBの長所短所をはっきり把握して、棚割で表現できるように準備をしておけばリニューアルされたPBが登場しても、皆様のNBが定番からカットされる可能性は低くなるでしょう。あるいは消費者調査をして、NBの存在意義を強調できるように理論武装しておくことも重要だと思います。
 個人的には、もうPBだけではお客様から支持される品揃えを実現するのは難しいと考えています。最近の消費傾向である巣籠もり、家ナカ消費、節約志向を経験したお客様は、家で料理やお酒を楽しみ、健康管理を兼ねて自転車ライフを楽しんだりしているので、ハマるタイプの凝り性が多い日本ではきっと単機能のPBでは満足感が得られなくなっている可能性が高いと思います。逆にお客様の嗜好をよく研究して高機能、高品質に仕上げられた商品はNBであろうとPBであろうと引き続き支持されマーケットを凌駕するでしょう。

小売のバイヤーが進化?

 またもう一つ気になることがあります。それはPBの縮小に伴い、今までPBを開発していた小売りの担当者がバイヤーとして戻ってきたらどのような商談をするのでしょうか。PB開発の担当者の中には、メーカーさんの商品開発部門の方と同じぐらいの知識を持っている人間もいます。
 つまり商品の仕様書が理解できるということです。その意味するところは、商品のコスト構造をある程度語れるバイヤーと皆様は商談する場面があるかもしれないということです。
 さてそんなとき皆様ならどうしますか。それこそ手ごわいですよ。いいチャンスと思って商品仕様についても勉強してみてください。

変化の激しい昨今ですが、流れにのみ込まれて立ち位置を見失わないように頑張りましょう。

2010年5月26日 09:46

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