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コラム・レポート

vol.20 商品分類

決算、そして苦戦

 皆様、こんにちは。
 さてさて、スーパー各社の上期中間決算が出始めましたが、明るい話題は全く見当たり
ませんね。
 2強といわれるイオンとセブン&アイHDの平成21年8月中間連結決算が出ましたが、個人消費の低迷、夏の天候不順などに足を引っ張られ業績を直撃したようです。イオンは中間期として2期連続の最終赤字、セブン&アイも主力事業が軒並み減収減益だったようです。各社コスト削減や事業構造の改革などに取り組んでいますが、世の中の低価格志向はとどまるところを知らず、小売業の先行き不透明感はより強まっています。
 特にGMSは、その収益構造から、衣料品が低迷すると全体の利益率が大きく下がってしまう宿命があります。現在はユニクロさん、しまむらさんなどアパレルの分野で非常に元気のよい小売業によって大きく影響を受けています。
 今までは食品がスーパーの売り上げをけん引していましたが、食品の利益率だけではGMSを支えきれません。しかもその食品の勢いにもここ数カ月陰りが見えてきているようで、予断を許さない状況です。

 その為、小売業は低迷脱出のため、色々な取り組みや施策を打ち出してきています。それは事業構造の改革、大幅なコスト削減策、組織改革など会社レベルでの取り組みから、ソーシングや仕入の改革、商品構成や品揃えの見直し、在庫の削減などなど現場レベルでの取り組みまで様々です。
 その中でも、我々現場を預かる立場として直面するのは、マーチャンダイジング部分での変革、改善です。真っ先に取り組まなくてはならないのは、商品構成、品揃えの見直しだと思います。

分析はマクロの視点を持って

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 品揃えを考え直す時に最初に始めることは何でしょうか。おそらく多くの方々はPOSデータの分析から入るでしょう。でもちょっと待ってください。今、手元にあるPOSデータは現状のカテゴリー、商品分類に基づいたPOSデータであり、いうなれば過去の延長線上のデータだということを認識してください。いわば閉ざされた範囲の中の分析となってしまいます。それでは不十分です。
 抜本的に品揃えや商品構成を見直そうとしているのですから、もう一度CDT(コンスーマーデシジョンツリー)から考え直し、数社の小売業の売り場を調査し、対象となるカテゴリーと機能や用途で関連するカテゴリーの数字も拾って、再定義するのが本来のアプローチです。
 ただし、これをするには難所があります。それは商品分類です。

小売業の商品分類

 小売業の商品マスターは、商品分類という括りによって体系化されています。商品分類はまさしくその企業の売り場編集であり、会計管理の括りでもあり、担当者の責任範囲でもあり、まさにその企業の文化といえるでしょう。POSデータにはこの分類が付与されていて、分析に使用する際に便利な場合もあれば、反対に取得元の違う複数のデータを比較する時に効率よく作業ができないとか、便利な時とそうでないときがあります。そして何よりも厄介なのは、分類の壁に阻まれ、横断的な品揃えができない場合があることです。
 小売業のバイヤーは、この分類に基づいて成績評価される仕組みになっています。担当カテゴリーの売上や利益がどのように変化したかによって給料やボーナスが決められる場合がほとんどです。ですから、自分が担当する品揃えや棚割に他人の管理する商品が入り込むことをなるべく避けたいというのが正直な気持ちです。非常に残念ですが、この縦割りの仕組みによって、売り場の変革が進まないのも事実です。

 また小売業の中でも、商品分類を変更するということは大変な労力を使うことになるため、柔軟に分類変更が実施できないということも事実です。本来ならば社会や環境の変化に応じて臨機応変に商品分類を変更できればそれに越したことはないのでしょうが、分類を変える→システムの登録変更のための準備作業をする→バイヤーも売り場も人の配置を変える→前担当と新担当の商品的な引き継ぎを行う→棚割を変える→大規模な売り場変更をする→前年の数字がしばらく使えない、というように大きなリスクが伴うのです。その為小売業も大きな分類変更をするのは大変な意思決定となるのです。

商品属性の活用

 だからといって、商品分類という壁に閉ざされたままもがき苦しんでいても仕方がありません。そこで『属性』というものをうまく使って対処してみてはいかがでしょう。小売業から預かったPOSデータを一旦自社で定義した属性で再分類して(当然そのPOSデータに含まれないカテゴリーの商品も含ませるようにして)、新たに商品構成を見直した棚割を提案してみるということに挑戦してみてはいかがでしょうか。そうすることによって相手先のバイヤーの視野、視点と違う新鮮な提案ができるのではないでしょうか。もちろん先に述べたように、自分の評価に関係のない商品を含む棚割にはバイヤーもはじめは違和感を持ったり抵抗を感じたりするでしょうが、『こうしたほうが結果的にカテゴリーの売上を伸ばす』という理論武装もしっかりしたうえで提案書を仕上げれば、徐々に品揃えも売り場も変わってくると思います。
 しかし、どうしても受け入れてもらえない場合は、バイヤーの上司のマネージャーや部長に説明してみるというのも一つの方法だと思います。バイヤーの上司は商品分類を横断的に管理していますから、担当バイヤーよりも聞く耳は柔軟です。皆様の上司からバイヤーの上司に提案してもらえば良いわけです。

buyer0020_2.gif  とにかく、小売業は(だけに限らないでしょうが)、売上も利益も欲しくて欲しくて仕方なく、今まで取り組みの浅かった、または取り扱いのなかったカテゴリーや商品に対してもアプローチをしている状態です。または価格戦略の見直し、業態フォーマットを超えて新店、改装をする、といったように、トライアンドエラーを繰り返している状態です。ここでブレークスルー出来る提案が作成できれば、皆様の評価もグッと上がると思われます。ぜひ一度、狭くなったバイヤーの視野を広げさせるような提案をしてみてください。

 では、頑張りましょう。



2009年10月16日 11:18

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