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コラム・レポート

vol.19 混迷続く

混迷続く

 皆さん、こんにちは。残暑の折、いかがお過ごしでしょうか。とはいっても冷夏で短い夏の残暑ですから、流通業に携わる皆様にとっては、悩み多き残暑といったところでしょうか。

 さていろいろな変化の多い昨今ですが、また我々を取り巻く環境に変化が起きています。大手コンビニエンスストアと大手ドラッグストアの業務提携、長きにわたり続いた自民党政権の交代、本当に不況の影響による変化が日々押し寄せてきます。ただ、いつも申し上げておりますが、変化はチャンス、流通は変化対応業です。押し寄せる波にうまく乗れるように準備とアクションを十分にしていきたいものです。

またこの天候不順のあおりを受けて生鮮食品の価格は上がり気味のものもあるようですが、主要な加工食品、日用品の店頭価格は多く下落している半面、原材料価格の高騰によって値上げを迫られている商品もあるようで、全くカオスのような状況です。
 はたしてお客様は何をどこでどのように買い物したらよいか、悩みの種が増えているのではないでしょうか。

 こんな状況下では、今までの常識に縛られて動いていたら良い結果は出ないでしょう。大きく考えれば、川上から川下までの仕組みを見直して、無駄なコストや生産性の低い仕事、作業を思い切って削減する仕組み(リストラをいっているのではありません)を考えなくてはならないということです。これは業界や企業のエライ人たちが率先して考えていただかなくてはならないことだと思います。

 しかし我々現場を預かるメンバーは、日々の業務の中でまず始められる改善、改革を実行したいところです。商談の仕方、提案書の内容、プロモーション、棚割等々、今まで当たり前、常識と考えていたことを、あえて疑問を持って違う角度から見て、「やめる」「やらない」をキーワードに考え直してみてはいかがでしょうか。

 ただし、やめる、やらない、だけでは内容が何もなくなってしまうので、奇抜すぎて提案できなかったアイデアや初めて取り組むような内容の提案を模索してください。何が起こっても不思議ではない環境です。ダメモトで提案しても面白いと思いますよ。

 小売りのバイヤーも正直、打ち手や戦術が頭打ちというのが本音でしょう。PBを含み価格競争だけが競合との差別化という消耗戦の様相を呈してきています。他社ではやっていない販促や拡販企画があればトライアンドエラーの気持ちでやってみたいはずです。

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 例えばちょっと前から「朝カレー」「朝活」が微妙なブームになっています。これは今までにない新機軸のブームです。健康志向とは逆行しているように思えますが、朝食をしっかりとることは健康管理や脳の活動に一役買うという意見もあるようで、このような潮流も見逃さずに新しい提案を出していけば、苦しき中にクリーンヒットが生まれる可能性もあるのではないでしょうか。

 また業界や企業のエライ人たちに真剣に取り組みを進めていただきたいのは、SCM(サプライチェーンマネジメント)ではないでしょうか。物が売れずに供給過剰になり流通在庫がダブつけば、価格面でも品質面でも必ず混乱が起きるはずです。注入する資金がないことは重々承知ですが、ぜひ今をSCM見直しの絶好の機会と考えてリソースの配分を考えていただきたいものです。

 一方、仕組みの見直しという点では、大手小売業による生鮮食品の垂直統合が本格化しています。農家や漁協と直接的に契約をして一括買い上げし、それを自社の店頭に並ぶまでの一気通関した仕組みで安心・安全、地球環境にやさしい、を「売り」として訴求できるということに強みがあると思います。消費者としても関心の強い分野に対してのソリューションとなりうる可能性もありますので、将来的には期待が大きいでしょう。コスト面でトーンダウンしてしまうことがないように祈ります。

在庫管理

 さて、前回欠品防止の重要性をお話しましたが、それと同じ位小売業にとって大切なのが在庫管理です。最近では、物が売れない状況の中で、在庫削減のための在庫管理が重要性を高めています。欠品を起こさないようにしながら在庫を削減しようとしているわけですから、注意深い在庫管理が求められているということになります。

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 在庫管理と一言でいっても、数量管理と品質管理の二つの側面があります。両方とも大切な要素ですが、在庫削減ということになると重要なのが数量管理です。単にPOSデータを見て、平均日販いくつ売れる、という販売数量だけを管理するだけではいけません。つまり棚割に単品ごとの販売数量に見合った陳列量、フェーシングが反映されているかどうかが重要ということです。なおかつ、その棚割に含まれている商品の回転が可能な限り近似値になるように工夫された棚割であることが望ましいのです。

 主な理由は、一つは品切れ防止と過剰在庫の防止を同時に実現しようとしているからです。今ひとつは、店舗の作業上、同じ売り場の前を行ったり来たり、同じ商品を何度も出したり引いたり(売場とバックルームの往復)といった無駄な作業の削減になるからです。
 皆様が提案されている棚割には在庫管理の視点が含まれていることは、現時点ではあまりないと思います。しかし前述したように、流通在庫全体の管理が必要になる、新基軸の提案が求められている、といった状況の中では、今後在庫管理という視点を盛り込んだ棚割提案というのも重要性が増してくるのではないでしょうか。
 勿論バイヤーの責任数値の中には、在庫金額、在庫回転日数などといった指標もありますので、在庫管理がしやすく在庫効率の改善が出来る棚割なら大喜びのはずです。

絞込み

 在庫削減と棚割といえば、必ず出てくる話が『商品の絞込み』です。確かに絞込みをすれば、在庫は減ります。有効在庫比率が上がり効率の良い棚割になります。ただ気をつけなくてはならないことは、以前も書きましたが、品揃えの幅と奥行きに気をつけなくてはならないということです。言い方を変えれば、POSデータでABCZ分析をして下位の商品から順番に削っていくという方法で絞込みをしてはいけないということです。品揃えの考え方の前提となっているマトリックスや商品構成グラフをきちんと横睨みしながら、不振商品、カニバリ商品を取り出して、売れ筋商品の陳列在庫やフェーシングをもっと確保できる棚割になっていなくてはならないということです。

 こうなると今までの提案棚割よりも高度な分析や仮説が求められるとお考えかもしれませんが、前述したように、今までと同じことを繰り返しやっていては競争に勝てない世の中になってしまったということを十分認識して一歩前に出て欲しいと思います。なぜなら、決してやって出来ないことではないからです。今なら誰もやってないことだからです。

 皆様、がんばりましょう。期待しています。

2009年9月 8日 12:51

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