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コラム・レポート

vol.13 業態戦略

1. 業界にパラダイムシフトが起きています

先般、スーパーの07年度業績が発表されました。
日本チェーンストア協会によれば、スーパー全体の売上高は前年対比で1.4%減(13兆9788億円)、11年連続マイナスとなっています。ただし、食品はPB商品が牽引し5年ぶりの横ばいとなったものの、天候不順による衣料品の不振がこの業績に反映したようです。
ちなみに全国スーパー売上高のピークは1997年で16兆8635億円、07年は約2割マイナスしたことになりますが、減少率としてはこの11年間では最小といえます。

あのセブン&アイ・ホールディングスでさえ、08年2月期は、営業収益が前年比7.8%増の5兆7523億円となったものの、営業利益が同2.0%減の 2810億円(営業減益は6年ぶり)、経常利益が同1.3%減の2782億円、当期利益が同2.1%減の1306億円でした。(ただし電子マネー「nanaco」の導入など先行投資負担が利益を圧迫)
イオンでも2月期決算で、総合スーパー事業は既存店売上高が前年比0・4%減。衣料品在庫処分などで粗利益率も低下、単体営業利益は5・5%減の317 億円と不振な結果だったようです。

そこでセブン&アイ・ホールディングスでは、ROE(自己資本当期利益率)の向上や営業利益率の向上のため、不採算店舗閉店を進める政策を打ち出しています。
具体的には、セブン・イレブンを600店、イトーヨーカ堂を3〜5店、デニーズ等外食店を140店閉鎖するなどの方針を発表しています。
イオンもまた、平成22年度までに、ジャスコやマイカルなど総合スーパー約100店を閉鎖する方針を打ち出し、店舗の売却や食品スーパーなどへの転換を検討するとのことです。イオングループの総合スーパー約600店舗の見直しが生き残りの課題となっているようです。
またPB(トップバリュ)を機能会社として別途会社設立し、グループ・シナジーの効果をあげる取り組みを始めましたが、不採算店舗のリストラにも着手し、規模拡大の恩恵と同時に収益性の向上も狙って、22年度の連結売上高目標を5兆8500億円超、営業利益目標を2500億円とする中期経営計画を発表しました。

2. 業態戦略の明確化が必要

こうした状況をみると、今まで流通を牽引してきたGMS店舗、特にロードサイド、市街地の単独出店店舗は集客力、競争力を失い、お客様から見て魅力のない店となっているのが明確です。
3~5年後、お客様から支持を受ける店舗とは、総合力のある大型ショッピングセンター、利便性があり、買い回りしやすいNSC(ネバフッド型ショッピングセンター)、カテゴリーキラー型店舗(家電、ドラッグストア、ホームセンターなど)に小売業は集約されてくるのではないでしょうか。

こう考えたとき、今から準備しておかなくてはならないのは、業態別の売り場作りや品揃えをどう構築していくかということになるのではないでしょうか。

以前もこのコラムで、商圏特性を考慮した品揃えや棚割を考えるべき、と書いた記憶がありますが、時代の流れはさらにそれに加えて、業態という特性を加味した品揃えを考える必要があるということになるのです。

ということは・・・ そもそも業態とは何ぞや、ということを考えなくては、品揃え、棚割に対する答えは出てこないということになります。これは非常に難しい問題です。小売業のバイヤーでも、明確に業態の定義を語れる人は少ないと思います。その点、アメリカでは業態の定義はきちんと存在するようですが、日本ではあいまいに定義されている場合が多いように思えます。
それは日本人の買い物の仕方と欧米のそれとの違いがあり、人種や所得によって店舗を使い分けるという必要性のない日本でのショッピングスタイルに起因するためだと考えます。

しかし今後は、小売業が自ら店舗を選別する時代になると、当然残した店舗での競争力を圧倒的なものとし、競争店、ライバル店舗との差別化を明確にするために、今一度自店、自業態のあり方を模索し始めるでしょう。つまり総合力あるショッピングセンターとは、どのような品揃えや売り場作りが必要なのか、お客様はそこに何を期待してご来店されるのか、NSCには、どのような目的でご来店されるのか、それを明確にした上で、商品構成、カテゴリー構成、価格戦略を考えていかなくてはならないということです。

この課題は、今すぐに答えが出るような簡単なことではありませんし、本来、小売が事前に定義を明確にし、ターゲット顧客、品揃え、価格の戦略を取引先様に提示しなくてはならないと思いますが、現時点ではそこまで期待できないのが実情だと思います。
それならば、製・販運命共同体として、今から共に知恵を出し合ってその答えを見つけていくべきでしょう。先方のバイヤーに徐々に投げかけをしてください。まずはバイヤーに考えさせることが重要であり、バイヤーが方針を出さなくてはならないのです。

3. PB戦略との共存

この大きな潮流の中で今ひとつ考えておかなくてはならないのは、PBとの共存を考えなくてはならない事です。
店舗を閉鎖してまで、収益性の向上に着手をしなくてはならない小売業は、当然PB開発と構成比アップを加速します。例えば、セブン&アイ・ホールディングスはプライベートブランド「セブンプレミアム」を2010年2月期には、売上げ3200億円までの拡大を計画しているとのことです。
またイオンも、10年度までに「トップバリュ」を3倍に増やす方針です。炊飯器や掃除機などの家電製品や衣料も拡充し、10年度に約6千品目、売上高で 07年度の2.8倍の7500億円をめざすと発表しています。
西友も「グレートバリュー」を08年の1年間で、1.5倍に拡充する計画。ユニーも4月から「UUCS」を開始します。
「安心で、低価格」とPBに対してはウェルカムな反応を示すお客様が増えているようで、まとめ買いする人も多いとのことです。

小売業が収益力を高める動きをするため、店舗展開の変革、商品構成、価格戦略の大きな転換を図る事を、メーカーの皆様も真摯に受け止め、「店舗は増えない、PBが並んでいるのは当然」という前提のもと、商品開発、売場提案をしなくてはなりません。つまりPBと共存しつつ差別化によりNB商品のよさをアピールできる売場を構築する事が必要になるということです。
商品構成を上手く考える事によって、品揃えの幅と奥行きの広がりを提供できる売場を作ることも可能だというように、ポジティブに考えましょう。

「変化はチャンス」という言葉があります。今自社の置かれている立場が、カテゴリーパートナー的位置づけなのか、棚割の主幹が取れていないのか、この変革期をどのように捉え、どのように対応していくかによって、2年先、5年先の業界勢力図も変わってくることでしょう。
今、最前線の営業の方は、ご自分が上司、マネジメントの立場になった時に、いかに優位なポジションで仕事が出来ているかを考え、今を頑張りましょう。

2008年5月 7日 16:39

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