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コラム・レポート

vol.12 値上げについて

昨今、値上げラッシュです。大豆、とうもろこし、食用油、原油、バイオ原料などの高騰の影響で、末端の食料品は軒並み値上げという状況になっています。

流通業界で禄を食むものにとって、商品の値上げ交渉、価格の攻防は大変厳しいミッションです。自社の生き残りをかけての立場と、消費者の生活を守る立場と、お互いの立場、理論をぶつけ合って、この状況を切り抜けなくてはなりません。

小売業の人間だって、メーカーさんが身勝手に、いい加減な値上げを申請に来ているわけではなく、致し方ない理由で値上げをする事を充分承知してはいますし、最近は便乗値上げみたいな社会通念上、批判を受けるような行為はできないことも分かっているのですが、小売業はその背負っている『消費者代位機能』という宿命のため、簡単には値上げを受容出来ないのです。
また、メーカーさんがコストアップ要因を何とか企業努力によって吸収する対策を考えていることも、バイヤーは理解しています。

とはいっても、やはり店頭でお客様から価格や値上げについて、お問い合わせや苦情をいただいた時に、納得のいく説明が出来ないと、最前線で働いている担当者にしわ寄せが行ってしまいますし、様々な環境で厳しい競争をしている店舗の現場では、少しでもお客様の支持を得るために、ギリギリまで価格の変更を遅らせようとするのも仕方のないことなのです。

商談現場では

上記のような前提を考えると、商談時に突然値上げの話を切り出されれば、当然バイヤーは抵抗を示すことになります。メーカーさん(営業担当)の場合、会社から公式発表の許可が出るまでは、バイヤーに値上げの話はストレートには出来ないと思いますが、出来る限り、業界の動きや生産事情などの話をしながら、値上げの可能性について商談時に触れておく事が重要です。事前に背景や理由や情報がバイヤーに入っていれば、関心事はあと、どの程度の値上げ幅か、いつから実施の予定かということに集中してきます。まぁ、簡単に言えば、心の準備をさせておくことが大切という事でしょうか。

それと、きちんと値上げの理由や根拠を、わかりやすく説明できるための準備を怠らない事です。値上げの正当性、必要性を理解してもらえるような資料を整えてください。具体的には、何が値上げの主たる原因であるのか、また値上げのタイミングはいつごろで、それまで当社(メーカーさん)としては、どのような準備、用意がされているか、小売業にはどのような協力を要請したいか、そのような内容の資料を準備していただきたいと思います。

今回のような値上げの場合は、企業が利益を追求するためだけの値上げではなく、社会現象的な原因での値上げですから、製造業、小売業が協力して乗り切らなくてはならないのです。

カテゴリーキャプテン(トップシェア)メーカーさんの責務は重要だと思います。やはり業界、カテゴリーをリードする立場ですから、他社に先駆けアクションを起こさなくてはなりません。ある意味、業界の標準を作っている立場でもあるので、つらい立場ではあると思いますが頑張らなくてはならないと思います。

小売業が考えている事

一方小売業は、お客様に対して価格のリーダーシップをとることに必死です。いつも申し上げているように、小売業は、企業対企業での競争よりも、個店対個店での競争に力点を置いているケースが多々あります。その為、競争店の調査は怠らず、常に自店の販売価格と競争店の価格の比較には注意を払っています。故に値上げに対しては敏感、神経質になるのも当然です。

お店は、ご来店いただけるお客様の生活を考え、守る事によってその存在価値を感じていますし、来店客数がその店の支持率といえるのです。
ですから値上げの理由、背景をきちんとお客様に伝える義務を感じていますし、また競争店より一日でも遅く値上げを実施したいと考えるものなのです。

お客様にとっては、同じ商品、同じ機能、同じバリューなら、価格は安いほうが良いはずです。ですから各小売業は単品の価格に敏感になるのです。そしてその期待に応える事が小売業の使命であるともいえます。
値上げに関しては通常の安売り競争とはその意味合いが異なります。単発的な集客手段ではなく、これから将来のために、その商圏での存在感をアピールしなくてはならないのです。

また通常の商談とは違いますので、これによって今まで築いてきたカテゴリーパートナーとしての関係を左右するような事はしたく無いとは考えますが、やはり値上げ交渉のアプローチが間違っていると、関係を再考するような事にもなりかねません。 特に今まで一緒に考えてきたカテゴリーの戦略、戦術を考え直すような状況にならないよう、早めに情報をバイヤーに入れてあげて、ともに対策を考えるくらいに、カテゴリーパートナーの位置を確保しなくてはなりません。戦略の再検討をせざるを得ない状況になったら最悪です。

PBの位置づけ

消費者の生活防衛意識は高まる一方です。しかし一旦獲得した生活レベルを下げることはなかなか出来ません。つまり、値上がりという逆風の中でも賢く買い物をするため、安くて、安心で安全な商品を捜し求めるでしょう。

そこで・・・ プライベート・ブランド(PB)に注目が集まる可能性が高まってきます。過去の歴史を振り返ってみても、PBが大きく成長したのは、例えば1970年代のオイルショックのときでした。
小売業がお客様の声に基づき開発した商品ですから、簡単には価格を変えられません。また売価は完全に小売業が主導権を取れる商品ですから、収益率を下げても、そのカテゴリーのプライスリーダーの位置を維持し続けるでしょう。
もちろん、委託先のメーカーさんとも懸命にコスト努力について検討が重ねられるのですが、可能な限り双方にメリットが出るように、決着点を見出しています。

さらには競争店との差別化戦略、お客様の支持獲得のもと、価格を維持するどころか、値下げに踏み切る企業、PBも出現しています。
この状況で、もはやPBは侮れない商品となります。値上げの対応とともに、PB対策の検討も必要となるでしょう。

皆様のご検討をお祈りします。一日も早く本当のWIN-WINが築けますように。

2008年2月12日 16:35

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