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コラム・レポート

vol.6 POSデータの分析目的って2−ヒントと答えは現場に

みなさん、こんにちは。
前回はPOSデータの基礎的かつ簡易的な分析方法についてお話しました。少しはためになったでしょうか。
また実際に試してみましたでしょうか。

データ分析の前に前提を整理

ところで前回のコラムの中で、データの分析は計画や仕掛けと比較して初めて効果のあるものだと申しましたが、それと同じくらい重要なのは、『現場』を見て実証するという事です。

『現場』とは、つまり『店舗』であり『売場』です。商談現場ではありません。

私がまだ店舗に勤務していた頃、まだITツールもPOSデータもそれほど浸透してなく(古い!)、売れ筋商品と死に筋商品を把握する最も効果的な方法は発注データを振り返ることと、とにかく品出ししながら商品に触ることでした。
当時、私は担当している売場については、バイヤーよりもよくわかっている、うちの店舗で買い物してくれるお客様のことは自分が一番良く知っている、という自覚と自負がありました。
ですから、その商品が何故売れたのか、もっと売るためにはどうしたら良いのか(どこに並べたら良いのか、どうやってフェーシングを広げたら良いのか、いくらにしたら伸ばせるのか)、頭で考えると同時に体を動かす事が出来ました。
そして”売り”に悩んだ時には発注台帳とにらめっこしながら閉店後の売場をウロウロと歩き、「ひょっとしたらもっと売れるはず・・・」という商品を見つけてはすぐに実験して結果を検証していました。

当時はPOSデータの精度も低いものでした。
レジでは正確にスキャンせず「売価さえ間違っていなければお客様に迷惑はかからないのだから」程度でレジを通していました。
また、発注も電話発注が残っていたので、仕入れ−販売−在庫 の循環も正確なデータとして残っていない状況でした。

前置きはさておき、「データと現場」の検証ですが、同じような規模、商圏の店舗で同じような企画や売場作りをしても、必ずしも同じような結果が出るとは限りません。
例えば、その売場(カテゴリー)が店舗内でどのように配置されているかを前提として把握してみると、何故結果に差が出たのかがわかります。
下記のような、典型的なレイアウトの店舗があったとします。

客導線に沿って考えてみれば、もっとも客様の目に触れやすい場所は②です。次に①、④、③の順番となるでしょう。 同じ小売チェーンでも、店舗の開店した時期によって微妙に売場レイアウトは違っていますので、同規模、類似商圏の店舗でも、カテゴリーが配置されている場所によって販売点数、売上は変わってきます。

こういったことも、『現場』を知る、分析前に前提を整理する、の一例といえます。
つまり一生懸命データを分析していても、アクションプランが見えてこないとき、このような背景を理解していないことがあるということを申し上げたいのです。前提の把握なしでは単にデータの並べ替えをしているに過ぎません。ご注意ください。

『現場』を知る、前提を整理するという意味で、この売場のレイアウトを知っておくというのは単なる一例です。 他にも、

・ 催事場の場所や広さ
・ POPの取り付け方
・ 関連販売のやり方
・ 陳列のメンテナンス

など、商品や売場を取り巻く環境を知った上で、POSデータとにらめっこしてみれば、自ずと分析を通じて見えてくるもの、次のアクションプランなどが変わってくるのです。場合によっては生鮮食品のメイン商材との関連性まで影響する事があります。

主要なポイント

1. 店内レイアウトとカテゴリーのロケーション(場所、配置)
先にも申しましたが、店内レイアウト上で有利な位置にあるか無いかで商品動向は変わってきます。
POSデータを分析している途中で店舗格差や異常値を発見した時、その店舗でそのカテゴリーがどのように取り扱われているかを確認する必要があります。ちょっとしたカテゴリーの配置の違いが長期間のデータで検証すると大きな格差を生じさせる事があります。

2. 立地や商圏の特徴
店舗の立地やどのような商圏を抱えているかによっても売上の差を生じる事は当然です。
日常的な買い物(例えば冷蔵庫の補給)を目的として来店されるお客様が多いのか、週末に普段と違う商品をお買い求めになるために来店されるお客様が多いのか・・・。
本来、それによって品揃えや棚割を変えるべきではありますが、オペレーション上の都合で品揃えや棚割がパターン化してしまっているチェーンでは、均一化した品揃えで商圏のお客様のニーズに答えられていない場合があるため、データに格差や異常値を生じさせる要因となります。皆様がご担当されているチェーンの主要店舗の立地条件を把握しておくと、データ分析の一助となるでしょう。
さらに言えば競合環境もこの範疇に入ると思います。

3. 売り場メンテナンス状況
コレは正直、重要な要因です。どんなに教育やトレーニングを施しても、売場担当者のスキルの高さ、意識の高さには違いがあります。
とはいっても、どこのチェーンも人手不足には悩んでいますので、売場に必ずしも優秀な人材が配置されているとは限りません。
スキル、意識の高い売場担当者がいる店舗は、お客様視点に立った売場での基本動作に忠実です。つまり「気持ちよくお買い物していただこう」という気持ちが売場のメンテナンス力に表れます。常に前進立体陳列が行き届いている、プライスカードやPOPが正しく取り付けられているといった、ごく当たり前の状態を維持できているのです。
スキルの高い担当者は「人が少ない」、「商品が多すぎる」という屁理屈、言い訳をしません。常に問題意識と改善意欲に満ちていて、くだらない言い訳なんか考える暇が無いのです。

業種や業態によっては、他にも優先順位の高いポイントがあるとは思いますが、小売業を考えるにあたって、上記の3点はほぼ共通することでしょう。

店舗別全店調査が必要か

上記の3点は重要である事は間違いないのですが、だからといって、全店舗でこれら3点を調査し、事前に把握する事は至難の業でしょう。

そこでお奨めするのは、キーとなる店舗を選定しておく事です。
つまり、我がカテゴリーが有利な位置に配置されている店舗、そうでない店舗の代表を決め、品揃えと商圏がマッチしている代表店舗、その反対の店舗を決めて、優秀な担当者がいる店舗を常にモニタリングしておくという事です。

それら「アンカー店舗」または「ベンチマーク店舗」を決め、POSデータの分析、評価の際にもそこから手を付けていけば、データの背景が容易に頭の中で想像できるようになります。
そうすれば単なるデータを「分析資料」として効率的にまとめることが出来るようになります。

また異常値が発見された店舗をしばらくマークしておくのも新たな発見につながる可能性があります。

そして今後重要性を帯びてくるのは、これらの考え方を昇華させ、店舗のグルーピングを作ることです。それはデータの分析の目的だけにとどまらず、品揃えや棚割を決めていく過程でも活用される、有効な情報(事前整理)となります。

同時に店舗クリニックを

以上を考慮し、入手したPOSデータを手に持って、その店舗の売場を見て回ってください。おそらく数字の発生原因となった色々な事実、現実が見えてきます。

その際、担当している売場だけでなく、生鮮食品、その他のカテゴリーも同時に観察してみてください。
その店舗が狙っている客層、担当しているカテゴリーとそれ以外のカテゴリーがターゲットとしている客層のベクトルが一致しているどうか・・・ これも結構面白い店舗の見方です。

小売業(特にバイヤーたち)は縦割り社会で構成されがちで、横連携が取れている企業は意外に少ないものです。担当している部門と隣の部門では微妙に戦略やターゲットとしている客層が違っていたりして、ベクトルがずれている場合があります。

店舗クリニックの方法についてはまた別の機会に語らせていただくとして、今回はこの辺で失礼します。

ご健闘をお祈りします・・・。  では。

2006年3月10日 16:17

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