コラム・レポートのアイコン

コラム・レポート

vol.5 POSデータの分析目的って

みなさん、こんにちは。
昨年末は、IY堂と西武百貨店の統合という衝撃的なニュースが発表となり、また「まちづくり三法」など小売業、流通業を取り巻く環境はますます厳しくなってきました。

しかしこんな時こそ「変化はチャンス」と考え、新しい発想を展開して取引、取り組みの形を変えていきましょう。

といいつつ、今回は一旦基本に立ち返り、そもそもPOSデータの分析とは何ぞや、その目的と基本操作について考えてみたいと思います。

まず前提として理解しておかなくてはならない事は、POSデータでは需要予測は出来ないという事です。傾向値は読み取る事が出来るかも知れませんが、将来何が起こるか予測する事は出来ません。

そして何のために分析をするのかを理解しなくてはなりません。
それは計画に対して実績がどうであったか、また”仕掛け”た結果、数値がどのように変わったか、そこから何を変えていくべきか改善策を立案するために利用する・・・ これが本来のPOSデータ分析の目的です。

ですから計画や”仕掛け”無きところでPOSデータを分析してみても、単なる数字のランキングで終わってしまう、あるいは何故この結果になったか背景がわからず、「さてどうしよう?」となってしまう光景をよく目にします。

例えば、「この商品を売りたい、売れるはずだ!」と思って棚割の中で有利な位置、フェーシングを与えた商品が、同品種の類似した商品と比較し、また市場データと比較して、どんな差異を生じさせる事が出来たのか、予定していた結果が得られたのか得られなかったのか、それは何故そうなったのか、その検証に使っていくのが正しいPOSの活用だといえます。

つまり、 ◆現象を把握する ⇒ ◆問題点を見つける ⇒ ◆原因を考える ⇒ ◆因果関係を特定し課題を発見する ⇒ ◆解決策を決める ⇒ ◆スケジュールを作る ⇒ ◆実行する  といった一連の流れの中でPOSデータを活用し、次のアクションプランまで立案できて初めて分析の目的が達成されるのです。

そしてその繰り返しが、血となり肉となり、実力になるのです。
取り組みの原則は、「仮説・実験・検証」の繰り返しです。

もうお分かりの事と思いますが、唐突にデータを広げて、「さ〜! 分析するぞ!」と頑張ってみても、その数字が出来上がった元となる「計画・仕掛け」が分かっていなければ、間違った結果や対策を導き出してしまう可能性がありますから、十分注意が必要です。

相手先小売業のバイヤーから、「悪いけど来週までに分析してきてくれるかな。」とPOSデータを渡されたら、すかさず上のロジックを使って、「直近3ヶ月の販売計画と現在の棚割もいただけますか?」と請求してみてはいかがですか。

基本的な手順として

POSの分析手法として最もよく知られているのが【ABC-Z分析】です。

パレート図に表現して、売上上位75%までを構成する商品をAランク商品とし、95%までをBランク、100%までをCランクとする考え方です。

この方法でSKUをランキングすれば、商品の優劣がはっきりします。

パレート図の作り方も、Excelを使えば簡単です。
POSデータを、(例えば)売れ数降順で並べ替えをして、それぞれの構成比とその累計を計算し、グラフ化すれば上図のようなグラフは簡単に作成できます。
(みなさんがお使いの棚割ソフトにも似たような機能が含まれている場合がありますので確認してみてください)

よく、ニッパチの原則という言葉を耳にしますが、ここでもそれが読み取れます。つまり全体の2割のSKU数で全体の8割の売上を稼いでいる場合が多く、商品を絞り込めばもっと効率良く売場作りができることがわかるのです。

ただし注意していただきたいことは・・・
◆ 『 Cランク=秒殺、即カット 』、ではありません。
その理由は以前、Vol.3の■□■品揃え計画の考え方■□■で申し上げましたように、品揃えはサブカテゴリー単位で構成され、それぞれのサブカテゴリーに必要な商品が配置されて始めて売場全体に品揃えの豊富感が出るのです。 そもそも購買頻度は高くないが、その商品がないとお客様が不自由するサブカテゴリーは、【ABC-Z分析】のようにカテゴリー全体を対象として相対的に評価すると常にCランクになってしまいがちですが、だからといって即カット対象にしてはいけません。

同様に代替商品が無い商品も簡単にカットするわけには行きません。

先ほど申し上げたように、棚割の状態や販売計画との照合も加味して、この商品がB、Cランクになった原因、因果関係を大まかにでも掴んでおかないと、正しいカットの意思決定は出来ません。

◆ Bランク中〜上位商品にも要注意。
すべてのカテゴリーで当てはまるわけではありませんが、この部分に位置している商品には、品揃えの中で「共食い(カニバリ)」に負けた商品が含まれている可能性があります。

個人的にはこのような商品こそカットを検討する、またはバイヤーの立場から言えば、取引条件を交渉するネタとなる商品なのです。 「このまま放置しておけばカット間違いなし。有利な条件(=納価引き下げ)出してください。」と簡単に言い放つことができてしまいます。

そして売場から「無駄・ムラ」を排除しながら、Cランクの商品をいかにBランクに持ち上げるか、Bランク下位の商品を売り込むチャンスをつくり、カテゴリー全体の底上げを狙うというアクションプランにつなげていくことで、売場の効率改善を図ります。

もし御社の商品がこのレベルに含まれていたら、生き残り手段を考えておいたほうが良いでしょう。反対に生き残り手段をうまく商談資料として応用し、相手先に企画提案するのもひとつの考え方かもしれません。

分析(検証)のサイクルとして

上記の【ABC-Z分析】は、簡単かつわかりやすい分析手法ですが、どのようなタイミングで実施していくかを考えなくてはなりません。

冒頭に申し上げたように、POSデータの分析は需要予測ではなく、実施したことに対する検証です。
例えば春と秋に大きな品揃え変更、売場変更がありますが、この前に分析をするのではなく、実は売場変更後2週間目から、毎週または隔週、毎月と定期的に検証するのが良いでしょう。

毎週やるのが良いか、毎月が良いのかはそのカテゴリーの平均的な商品回転率に応じて判断してください。
商品回転日数が20日、30日を越えるカテゴリーで毎週分析しても、かえって間違った判断をしてしまいますので、適切なサイクルの検討が必要です。
当然相手先小売業者の業態にも配慮する必要があると思います。

そして早めに問題点を発見し、課題を作り、アクションしていくことによって、常にカテゴリーや売場は鮮度が高く、効率の高い売場が維持できるようになります。

また継続的に分析−改善を実施することで、春と秋の定番変更という一大イベントも作業的な負荷が削減され、計画を売場で具現化するスピードも向上し、よりPOSデータの精度も向上するという副産物も得られます。
今回は基礎的なPOSデータの扱い方について考えてみましたが、まずはみなさんもどこかで実験的にでも実施してみることが大切かと思います。

やってみなければ何も始まりませんし、やってみることで新たな課題も見えてきます。

ご健闘をお祈りしています ・・・では。

2006年2月 2日 15:17

お問い合わせ

    • ご購入前のお問い合わせ   :
    • 03-6908-7878
    • 保守契約に基づくお問い合わせ:
    • 03-6908-7817

受付時間 9:00-18:00
(土日祝日・年末年始・当社休日を除く)

ページトップへ