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コラム・レポート

vol.2 価値や情報の提供で差別化を

みなさん、こんにちは。
前回最後に、品揃えの考え方や組み立て方についてお話しますと書きましたが、その前に皆さん、小売業のバイヤーって社内的にどのようなポジションにいる人たちかをご存知ですか?
皆様の側から見て、バイヤーは、商談をし、品揃えを決め、販促企画を立案し、仕入れ原価を交渉し、販売価格を決めて、リベート交渉をして利益を稼ぐ源を作る人に映るでしょう。
バイヤーの日常的行動としてはそのとおりです。しかし皆様の目に映るバイヤーの行動は、正直言って氷山の一角に過ぎません。少なくとも私の所属する会社では、表面的なバイヤーの行動の裏にはその10倍近くエネルギーを注ぎ込む仕事があるのです。

☆☆ 誰が商品知識を広めるか ☆☆

その一つが商品知識を社内に浸透させる事です。
小売業である以上、店頭でお客様から商品についてお問い合わせがあった場合、ある程度はその場で、即座にご説明できなくてはなりません。しかし店舗の人たちの主たる業務は、売場の維持管理であり、商品管理であります。またはパート社員のレイバースケジュールを管理する事にあります。

たとえば加工食品の担当者であれば、1人で4,500SKU〜6,000SKUを管理しなくてはなりません。そんな役割を任せられている人たちに、一つ一つの商品に対してウンチクを語れ、というのは所詮無理な話です。

売場の担当者は、日々ご来店いただけるお客様に、サービスレベルの高い(品切れのない)売場を提供する事、自店の競合店の情報を集め、売場に反映させる事に専念しなくてはなりません。
そこで商品知識を捕捉してあげるのが、カテゴリー担当のバイヤーの仕事となります。

特に、重点商品、話題性の高い商品、季節商品について、何故この商品なのか、何故この商品を売り込む必要があるのか、またこの商品に含まれている素材や成分は何に役立つのか、それらをメーカーとの商談から知識を得て、エキスを資料としてまとめて、売場担当者が理解しやすいように提供してあげるのもバイヤーの主たる職務の一つです。

お客様の疑問、質問に的確にお答えできるお店は、サービスレベルが高く、満足度が高く支持される店舗でしょう。

ここでお願いです。バイヤーが商品の特徴、特性を簡潔に説明できるような資料を、商談資料に添えてあげてください。商談ごとに毎回小出しにしてもかまいません。バイヤーにとってはこの上なく有り難い資料となります。またバイヤーも売場担当者もその商品に愛着が沸いてくるはずです。

以前こんな情景を目の当たりにした事があります。
(売場担当者) 「麦焼酎と米焼酎って何が違うのですか?」
(バイヤー) 「絶句・・・」。

本当にあった話です。でも私は笑う事が出来ませんでした。それだけ売場担当者は日々のオペレーションに時間を割かれ、小売業に身をおく人間でありながら、商品のことを勉強する時間がないのだな、ではバイヤーは月に1度の会議を利用してでも、マメ知識、役立つ知識を提供してやる必要がある、それを体系的に継続しなくてはならないのだ、そう感じました。

またこんな事もありました。
(売場担当者) 「春雨の原料って何ですか? 何故あの売場に並べてるのですか?」
(バイヤー) 「そんなこと俺に聞くな。昔から売場はあそこと決まってるんだ!」

もういい加減にしてくれよ、って気分になりました。しかし知的向上心のないバイヤーってこんなもんでしょう。原価交渉だけがオレの唯一の仕事と思っている輩が少なくないことも否定しません。

☆☆ 商品知識の重要性 ☆☆

このような人たちがはびこっている小売業は早晩衰退します。
貴方が担当する企業が衰退傾向になってしまったら困りますよね。
だからもう一度お願いします。商談時に、商品のマメ知識を添えてあげるように心がけてください。そして商品に対する関心を芽生えさせてあげてください。

人は、勉強しろ!といわれて勉強する時は、苦痛に感じるものです。ですから、一気にまとめてではなく、わかりやすく、少しずつ、トリビア的な話から始めて、商品やカテゴリーに対して知的にしてあげてください。
この積み重ねも相手先と戦略的協業関係を築くうえで大切な事です。

“小売業でのバイヤーのポジション”から少々話が横道に反れてしまいました。
要は何が言いたかったかというと、小売業においてバイヤーは、唯一(といっても過言でない)商品に関する深い知識を社内に広められる立場の人である、またバイヤーが商品に関する情報をまとめられなかったら、その小売業には何も商品知識が蓄積されなくなるという事です。ですからバイヤーは数値管理と同じくらい(個人的にはそれ以上と思うが)、商品に対する造詣が深くなくてはならないのです。(支援してあげてください)

話が横道にそれたついでに・・・
私が駆け出しのバイヤーの頃、(優秀な)先輩バイヤーに教えられた事。
「メーカーさんの工場見学はどんどん行ってこい。ただしそこで作業工程やラインの精巧さなんかに感動してくるな。ラインの横に置いてある砂糖や塩の袋をみて、どこからどんな原料を仕入れて商品作ってるか見てこい。それが原価交渉の源にもなり、将来ストアブランドを作る時に役に立つぞ。」
こんなバイヤーを相手に貴方は対等に商談できる自信はありますか?貴方は同じレベルで話についていけますか?
先ほどの情けないバイヤーとは真逆に、小売業にもこんなバイヤーもいるということを知っておいてください。(ちなみに私は教えを実践しましたが活用できるところまでは至っておりません)

ここまでをまとめます。商品知識をバイヤーに植え付ける努力は、結果として売場からも貴方の会社は好かれ支持され、ご自分の成績に跳ね返ってきます。

また例えば、お客様がおいしくカレーを食べたいと思ってお買い物に来たと想定します。そのお客様が知りたいのは、ハウスバーモントカレーとSBゴールデンカレーの違いが何かを知りたくて来たのではないのです。
普段作っているカレーにどのような香辛料を入れたらおいしさが増すだろう、いつもと一味違うカレーを作るためには何が必要なのだろう、そんな情報やアドバイスを求めてお店に来るのです。

そんなときに売場の人がその売場の前までお客様を案内して、「いろいろあるので商品の裏面を読んで気に入ったのを買てってください。」なんてご案内していたら、それは最低です。

今消費者が求めているのは、「モノ」よりも「情報」や「価値」なのです。それはメーカーさん+バイヤーから売場担当者、店頭に発信されるべきものなのです。

結果として、皆さんが商談時に添える商品マメ知識は、お客様がプラス1品のお買い上げ(満足を伴って)につながり、店頭に貢献できる結果となります。売上は、客数×客単価、または買い上げ点数×1点単価で表すことが出来ます。

この客数の増加買い上げ点数の増加は簡単なことではありません。日々ご来店いただけるお客様の満足の積み重ねでしか実現できません。

ですからメーカーの皆様からご提供いただける商品知識、マメ知識は上手に使えばその店の信頼度を高める事につながるのです。それだけ重要な要素であるのです。
ゆえにバイヤーとの商談は、販促企画の売り込み、原価交渉だけではなく、その商品を消費生活の中でどのように活用していただけるかを情報交換する場でもあると考えてください。

☆☆ 勝利のストーリー ☆☆

前回のコラムでも書きましたが、小売業者はカテゴリーの活性化と成長を常に考えます。
商品知識、マメ知識を増やす事によって、カテゴリー全体の需要を活性化することに結びつけ、目標を達成する事が出来ます。

皆様の側でも、カテゴリー全体が活性化し、需要が伸びれば、納価はいくらだ、売った、買った、という商談をしなくても、販売の底上げが自然に出来るようになるのです。
こうなると商談、ビジネスのやり方に変化が起こります。単品商談から、カテゴリー活性化の商談に様変わりしてくるのです。

カテゴリーの動きが見えるようになると、自社の商品の位置づけがわかるようになります。単に売れてる、売れてないのランクだけでなく、カテゴリーを一つの商品チームとしてみた時に、我が商品はどのような役割を果たしているのかがわかるようになるという事です。

我が商品の役割が不明確だとわかったら、商品をどのように改良したらよいのか、どこに開発の機会があるのか、商品や売り方、開発、改良の方法がより鮮明に見えてくるのです。

☆☆ 工夫やアイデアも価値 ☆☆

最後に・・・
今の世の中、インターネットを通じて、いくらでも欲しい情報は入手できます。買い物も出来ます。でもインターネットで情報検索をする場合には、ある程度あたりを付けないと目的の情報にはヒットしません。また良質な情報を持っている人の全てが、ネット上にHPを持っているわけでもなく、随時更新されているわけではありません。

そんな時、あの店にいくとヒントやプロの工夫や、常日頃それを使っている(食べている)人のアイデアが聞ける、という状態であれば、必ず店は繁栄するはずです。
ハイタッチ(ヒューマンタッチ)な買い物の仕方が、今だからこそ必要な気がします。

消耗・消費材は、正直言って、どこのスーパーに行っても同じものが売ってます。他の店と差別化するためには、価格を下げるか(貴方の同僚が貴方のライバル企業で安い原価を提示しているかもしれません)、価値や情報を添えて売るかをしなくてはならないのです。

貴方の担当する企業、チェーンが一日も早く価値や情報の伝達で差別化された店になれば、無駄な販促費を使わなくても、安定的に売上は確保できるのです。

今回は、通常チェーンストアのバイヤーがどのように品揃えを組み立てるロジックを持っているかをお話しようと思っていたのですが、うっかり脱線してしまいました。
次回はその路線で独り言を言ってみようと思います。

ではまた。

2005年8月18日 11:11

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